登録番号 | 農林認定 | ばれいしょ農林29号 | 1987. 6 |
種苗法 | 第1812号 | 1988.12.13登録 2003.12.14満了 |
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北海道優良品種 | ばれいしょ北海道第19号 | 1987. 3.12 | |
地方番号 | 北海63号 | ||
系統名 | 島系524号 | ||
系統番号 | 75002-44 | ||
組合せ | 男爵薯×Tunika (1975 北海道農業試験場交配) | 系譜図 |
花 (北見農試) | 草姿 (北見農試) | 塊茎 (北見農試) |
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用途 | 食用 |
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長所 |
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短所 |
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ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種の育成を目標として、北海道農業試験場において昭和50年(1975)に「男爵薯」を母、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性の「ツニカ(Tunika)」を父として交配し、選抜、育成された食用品種である。昭和62年(1987)に「キタアカリ」の名で命名登録された。名前の由来は育成地の北の大地を線虫被害から守る希望と明るさを表現している。食用品種としては、「エゾアカリ」とともにわが国で初めて育成されたジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種である。
食味が良いことやビタミンCが多いことが消費者にも徐々に認知され、北海道における平成26年(2014)産の作付面積は、シストセンチュウ抵抗性品種では最多の1,801haであるが、「男爵薯」より煮くずれが多く、煮物には不向きなことや貯蔵中の品質低下が大きいことなどから、1,800〜2,000ha強で頭打ちとなっている。北海道外では東北、関東、北陸、東海地方などを中心に全国で栽培されており、全国の作付面積は3,064ha(平成24年(2012))である。「黄金男爵」、「VIP
(Very Important Potato)」、「栗じゃが」などの名で売られている例もある。
(系譜図)
幼芽には赤紫の斑点があり、萌芽時の葉色は紫色を帯びている。そう性は「男爵薯」に近い中間型である。茎長は「男爵薯」より長く「ワセシロ」程度のやや短で、茎の太さは中、茎数は「男爵薯」より多い。茎色は緑色で茎の基部に赤紫の斑点がある。茎翼は直で、分枝数は少ない。葉色は緑で「男爵薯」よりやや淡い。小葉の形はやや幅広く、大きさは「男爵薯」より小さく「メークイン」程度である。花冠の形は中間で、花数と花の大きさはともに中である。花の色は「男爵薯」よりやや濃い赤紫系で、花弁の先端は両面とも白い。花粉量は多く、自然結果も少程度みられる。
いもの形は扁球形、皮色は黄色で目の部分に赤紫色の着色がある。表皮は「男爵薯」より粗いため外見に重きをおく市場では、中身の品質が優れている割には不利なことが多い。目の深浅、目の数はともに中、肉は「メークイン」より濃い黄色である。
休眠期間は「男爵薯」より短い中である。萌芽、初期生育とも「男爵薯」並ないしやや早い。枯凋期は「男爵薯」より1〜2日遅い早生に属する。
株当りいも数が多くなるやや個数型の品種である。上いも平均一個重の増加は「男爵薯」よりやや遅く、枯凋期後も「男爵薯」並かやや小さめだが、中以上いも収量は「男爵薯」より若干多い。澱粉価は肥大の初〜中期ではやや低いが、最終的には16〜17%で「男爵薯」より1ポイント程度高くなる。施肥量に対する反応は「男爵薯」並で、1.5倍肥にした場合の収量は、中〜小いも収量の割合が減少し、大いも以上の割合が増加する。栽植密度に対する反応は、3,419株から4,444/10aにすることによって若干増収するが、中〜小いもの割合が高くなる傾向がある。いもの貯蔵性はやや劣り、粉質度の低下や肉の軟化が「男爵薯」より多い。
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を持ち、パソタイプRo1に抵抗性がある。。疫病抵抗性及び塊茎腐敗抵抗性は「男爵薯」並の弱である。塊茎の軟腐病抵抗性は中で、茎葉の軟腐病発生は「男爵薯」と同程度である。粉状そうか病には「農林1号」より弱く「男爵薯」並のやや弱である。青枯病抵抗性は「男爵薯」並の弱、乾腐病にやや弱い。ウイルス病には一般品種並に罹病する。葉巻病の次代の病徴は明瞭で、Yモザイク病は、PVY-Oに対してれん葉型の病徴を示すが、第1次病徴は現れにくく、第2次病徴はモザイク症状や軽いえそ斑を現すこともあり、PVY-Tに対してもれん葉と脈えそを現す。中心空洞はほとんどみられず、褐色心腐は「男爵薯」並か少ない傾向にあり、症状は中心部えそ型となる。
水煮の肉質はやや粉質で、貯蔵の経過とともに粉質度が低下しやすい。煮上がりが早く、煮くずれの程度は「男爵薯」よりやや多い中である。「キタアカリ」で煮くずれが多い要因としては、澱粉を多く含む細胞群が「ホッカイコガネ」では維管束環内部にあるのに対して「キタアカリ」では表皮に近い部分にあること、細胞サイズが大きく単位体積あたりの細胞間の接着面積が小さくなり細胞が分離しやすいこと、細胞間隙の量が多く細胞分離が起こりやすい構造を持つこと、さらに細胞壁成分の特性として、細胞間を接着するペクチン質の分子間架橋結合力が低いことが明らかにされている。舌ざわりはやや滑らかである。調理後黒変は無い。食味は「男爵薯」並かやや良好な中の上で、えぐ味がなくややさつまいもに似た良い香りがする。長く貯蔵すると食味が低下しやすいといわれる。用途は、サラダ、皮つきで蒸したり、粉ふきとしたり、また、スープなどのそう菜や外食産業にも向くが、煮くずれしやすいので長時間煮込む料理には不適である。電子レンジ加熱は香りを生かすことができ、煮くずれの心配もないので「キタアカリ」に適した調理法といえる。
貯蔵中の糖の増加が多く、ポテトチップなどの油加工には向かない。
カロテン含有量が高く、ビタミンCも「男爵薯」の約1.5倍近く含まれています。グリコアルカロイド含量は「メークイン」、「とうや」より少なく「男爵薯」並で、曝光による生成も「男爵薯」並である。
道央地域で特にジャガイモシストセンチュウ発生地帯に普及を優先する。
・ジャガイモシストセンチュウに抵抗性があり、感受性品種同様、幼虫が根に侵入するが、本品種の根ではシストを形成できないため、土壌中の線虫密度を低下させることができる。
・施肥量は「男爵薯」に準ずるが、密植すると中・小いもを増加し経済収量の増加につながらないので、栽植密度は10a当り3,500〜4,000株のやや疎植とする。
・排水不良地では、生育後期の大雨などによって、塊茎腐敗の多発を招く恐れがある。
・「男爵薯」と同様に疫病に弱いので、疫病の防除に留意する。
西部幸男、坂口進、入倉幸雄、梅村芳樹、奥山善直、佐藤正人、森元幸、内澤啓、気賀沢和男、稲垣春郎
北海道(平成28年廃止)、富山県、福井県、福岡県
三浦豊雄 編.“農作物優良品種の解説 (1987-1995)”.北海道立農業試験場資料 第26号(1996).北海道立中央農業試験場
西部幸男.“食用ばれいしょ新品種「キタアカリ」「エゾアカリ」”.農業技術.42(10):460-461 (1987)
ビタミンCが多い良食味ばれいしょ「キタアカリ」 (北海道農業研究センター生まれの作物たち 北海道農業研究センター育成品種一覧)
Chie MATSUURA-ENDO et. al. Disintegration Differences in Cooked Potatoes from Three Japanese Cultivars: Comparison of Starch Distribution within One Tuber and Tissue Structure. Food Science and Technology Research 8(3):252-256 (2002)
ばれいしょの煮くずれに関与する要因.平成11年度北海道農業試験会議(成績会議)資料 (2000.1)ばれいしょの煮くずれに関与する要因 (Agriknowledge 農研機構研究成果情報)