登録番号 | 農林認定 | ばれいしょ農林38号 | 1997. 8.18 |
種苗法 | 第8638号 | 2001. 2. 9登録 | |
北海道優良品種 | ばれいしょ北海道第31号 | 1997. 3 11 | |
地方番号 | 根育29号 | (1994) | |
系統名 | 根系81号 | (1993) | |
系統番号 | KW84158-15 | ||
組合せ | S.tuberosum ssp.andigena「W553-4」×R392-50 (1984 根釧農業試験場) | 系譜図 |
花 (北見農試) | 草姿 (北見農試) | 塊茎 (北見農試) |
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用途 | 食用 |
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長所 |
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短所 |
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昭和59年(1984)に北海道立根釧農試において、ジャガイモシストセンチュウ及び疫病抵抗性を有する食用品種の育成を目標に、コロンビア国のポパヤン郊外の栽培試験圃場から収集した真正種子より選抜された疫病圃場抵抗性で多収性の近縁種系統
S.tuberosum ssp.andigena「W553-4」(入倉幸雄氏によれば、「W553」は疫病抵抗性主働遺伝子R3を持っており、後代の分離が大きいので種間雑種の可能性があるとのことです)、を母、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子を3重式に持つ「R392-50」を父として人工交配し、翌年より選抜を重ねてきたものです。平成元年(1989)に生産力検定試験に供試した後、食用品種としては枯凋期が遅く、上いも平均一個重も小さすぎるとして試験を中止し、交配母本として保存することにしましたが、その後の試験で疫病抵抗性が極めて強いことが明らかになったことから、再び生産力検定試験に供試し、平成5年(1993)年に「根系81号」、平成6年(1994)には「根育29号」の地方番号を付して実用性の検討を重ねました。平成9年(1997)に「ばれいしょ農林38号」として登録、赤紫色の大きく美しい花と育成地の地名(中標津)にちなんで「花標津」と命名されました。
作付面積は数haで、食用や加工用としての販売はきわめて少ないですが、家庭菜園用の種いもがホームセンターなどで売られています。
(系譜図)
「花標津」を母親として交配した組合せから、平成18年(2006)年に疫病に強く、「花標津」の目の深さやいもの小ささなどの短所が改良された「さやあかね」が育成されました。
幼芽の色は赤紫です。そう性はやや開張型で、茎長は「男爵薯」及び「農林1号」より長いやや長、茎は太く、茎長が長い割には倒伏しずらい。茎色は緑の一次色に赤紫の2次色が斑紋状に分布しています。分枝数は「男爵薯」より多く「農林1号」並の中です。頂小葉及び小葉の形は「男爵薯」より細く「農林1号」並の中間、小葉の大きさは「男爵薯」より小さく「農林1号」並の中です。葉軸は赤色を帯びています。花色は「男爵薯」より濃い赤紫系で、2次色は無い。花の数は「男爵薯」並に多く、花の大きさは「男爵薯」より大きい。色のやや濃い大きな花が比較的長期間多数咲くので景観作物としても利用価値が高いと期待されます。花粉の量は「農林1号」より多いやや多ですが、不稔花粉が多いとみられ、自然結果することはまれです。
ふく枝は長く、「男爵薯」及び「農林1号」よりかなり長い。いも着生の深浅は「農林1号」より浅く「男爵薯」並の浅に属します。いもの形は扁球形で、皮色の1次色は淡赤、2次色は目に赤色が分布します。表皮の粗滑は「男爵薯」並の中で、表皮のネットは無い。目の深浅は「農林1号」より深く「男爵薯」並に深い。肉色は淡黄で2次色は通常みられませんが、まれに赤紫のアントシアニンの着色がみられることがあります。
休眠期間は「男爵薯」より短く「農林1号」並のやや短に属します。初期生育は「男爵薯」並のやや速ですが、いもの早期肥大性はやや遅い。枯凋期は「男爵薯」より遅く「農林1号」並の中晩生に属します。
上いも収量は「男爵薯」より多く「農林1号」並の多、中以上いも収量は「男爵薯」より多く「農林1号」より少ない中です。上いも数は「男爵薯」及び「農林1号」より多いより多、中以上のいも数は「男爵薯」及び「農林1号」より多い多に属する。上いも平均一個重は「男爵薯」より小さいより小で、上いもの粒ぞろいは「男爵薯」並の中。澱粉価は「男爵薯」並の低です。
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子型はH1と推定され、北海道で発生しているパソタイプRo1に抵抗性を有しています。疫病圃場抵抗性はごく強く、疫病無防除栽培でも収量の低下や澱粉価、ビタミンCなどの品質の低下はほとんどみられません。疫病による塊茎腐敗抵抗性は「男爵薯」及び「農林1号」より強いやや強。葉巻病には「男爵薯」並の弱。Yモザイク病には強く、PVY-Tには抵抗性です(PVY-Oは未確認)。青枯病抵抗性は「男爵薯」並のごく弱。そうか病及び粉状そうか病抵抗性は「男爵薯」並の弱。褐色心腐及び中心空洞は「男爵薯」より少ない無で、二次生長は「男爵薯」よりやや多い少です。
調理後の肉質は中で「男爵薯」より粉質度が低く、舌ざわりは滑らかです。調理後黒変の程度は「男爵薯」より多く「農林1号」より少ない少。煮くずれの程度は「男爵薯」より少なく「農林1号」並のやや少。香りや味は濃厚で、低温貯蔵すると春先にかなり甘みが増します。
チップ・フライの褐変程度は「男爵薯」並の中で油加工には向きません。
・塊茎形成及び肥大が遅いので、浴光催芽、早植えなど初期生育の確保につとめる。
・疫病の無防除と組み合わせて他の薬剤の使用も控える場合には、土壌病害や軟腐病、菌核病の発生が多い・圃場での栽培を避ける。
・収穫後は、赤皮で緑化いもとの識別が難しいので、遮光シートで覆うなど曝光を避ける。休眠が短いので、低温貯蔵につとめる。
育成従事者
伊藤武、村上紀夫、奥山善直、千田圭一、関口建二、松永浩、入谷正樹