ムサマル

登録番号 農林認定 ばれいしょ農林32号 1992. 7
種苗法  第4110号 1994.11.22登録
2009.11.23満了
北海道優良品種 ばれいしょ北海道第22号 1992. 3.21
地方番号 根育22号 (1988)
系統名 根系60号   (1986)
系統番号 K80059-8
組合せ Tunika×根育20号 (1980 根釧農業試験場) 系譜図

花 (北見農試) 草姿 塊茎 (北見農試)
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用途 加工食品用 (フレンチフライ)
長所
  • 大粒、多収で高澱粉価である。
  • ジャガイモシストセンチュウに抵抗性。
  • フレンチフライ加工適性が高い。
短所
  • 褐色心腐が発生することがある。


(1)来歴

 昭和55年(1980)北海道立根釧農試において、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性加工用品種を目標に、ツニカ」を母「根育20号」を父として交配後し、選抜されたものである。昭和61年(1986)に「根系60号」、昭和63年(1988)年には「根育22号」の地方番号を付与し、加工食品用品種としての実用性を検討した結果、平成4年(1992)に「ばれいしょ農林32号」として登録され、育成地中標津町にそびえる武佐岳と、いもの形が丸みを帯びていることから「ムサマル」と命名された。
 加工食品用(フレンチフライ)としては、国内初のジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種である
 褐色心腐が発生することがあり、多収で澱粉収量が多いことから、主として澱粉原料用として栽培されている。平成8年(1996)には320ha作付けされたのをピークに近年は100ha前後、平成24年(2012)には113haであった。
系譜図

(2)形態的特性

 幼芽の色は淡赤で、萌芽時の葉色は淡緑である。茎長は「農林1号」よりかなり長く「ホッカイコガネ」並で、茎の太さは中、茎翼はやや波状を呈する。そう性はやや開張型で、分枝数は「ホッカイコガネ」よりやや多い。葉色は「ホッカイコガネ」より淡いやや淡緑である。小葉の形は中で、頂小葉はの大きさは「ホッカイコガネ」並で、小葉の大きさは「ホッカイコガネ」よりやや小さい。花の色は赤紫系で、花弁の先端にわずかに白い2次色が分布する。花は「ホッカイコガネ」より大きく、数は「農林1号」及び「ホッカイコガネ」よりやや少ない。花粉の量は中で、自然結果は「ホッカイコガネ」より少ない少である。
 ふく枝の長さは短い。いもの形は卵形で、扁平度が比較的小さく太った印象を与える。皮色は黄褐色で、表皮は「ホッカイコガネ」に比べやや粗く、ネットが中程度みられる。目の深浅は「農林1号」より浅く「ホッカイコガネ」より深いやや浅で、目の数は中です。肉色は淡黄である

(3)生態的特性

 休眠期間は「ホッカイガネ」よりやや長いが、休眠明け後の芽の伸長は「ホッカイコガネ」より速い。初期生育は「ホッカイコガネ」よりやや速い。早期肥大性は「ホッカイコガネ」よりやや速く「農林1号」並の中。枯凋期は「ホッカイコガネ」並ないしわずかに遅い中晩生に属する
 上いも数は「ホッカイコガネ」よりやや少ないですが、上いも平均一個重が大きく上いも収量及び中以上いも収量は「ホッカイコガネ」より多く「農林1号」よりもわずかに多い澱粉価は「ホッカイコガネ」より2ポイント以上高いやや高で、澱粉収量では澱粉原料用品種を上回ることもある。貯蔵中の減耗による塊茎表面の軟化が少なく、貯蔵性が良い

(4)病害虫抵抗性

 ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を持ち(推定遺伝子型H1H1hh)、パソタイプRo1に対して抵抗性である。疫病抵抗性主働遺伝子を持っていないが、疫病による塊茎腐敗は「ホッカイコガネ」より少なく塊茎腐敗抵抗性は強い。葉巻病の第1次病徴は「農林1号」並に現れ、罹病株の判定は容易である。Yモザイク病に対してはPVY-Oには罹病し、えそ反応は「男爵薯」並に弱く現れるが、PVY-Tには抵抗性である。そうか病には既存品種と同様に弱く、粉状そうか病抵抗性は「ホッカイコガネ」より弱いやや弱である。青枯病抵抗性は「男爵薯」並の弱。褐色心腐の発生は「ホッカイコガネ」より多く「農林1号」並かやや少ない微だが、乾燥条件では多発することがあり、内部褐色斑点が内部に散在する型となる。中心空洞の発生は「ホッイコガネ」より多い微であるが、大いもにもほとんど発生しない。二次生長の発生は「ホッカイコガネ」並のごく微で、裂開はみられない。

(5)品質特性

 用途は加工食品用(フレンチフライ)である。剥皮褐変は極めて少ない。水煮の肉質はやや粉質で、煮くずれは「ホッカイコガネ」より多いやや少である。調理後黒変は微で、「農林1号」よりは少ないが「ホッカイコガネ」より多く、年次によりやや目立つ香り、味とも良く、食味は中の上であるビタミンC含量は「男爵薯」より多く「キタアカリ」に近いグリコアルカロイド含量は、「男爵薯」より少なく「さやか」並かさらに少なく、曝光による生成も比較的少ない方である。
 収穫直後の塊茎中のグルコース含量は、「ホッカイコガネ」より少なく「トヨシロ」並で、シュクロース含量は「ホッカイコガネ」より多い。チップカラー値は「ホッカイコガネ」より高く「トヨシロ」よりやや低い。フレンチフライの褐変程度は「ホッカイコガネ」並の少である。皮層部と塊茎中心部との澱粉含量の差は「ホッカイコガネ」より大きいが、澱粉価の絶対値が高いので中心部のフライのやせは目立たず、乾湿の程度もやや乾となり、フレンチフライ加工適性に優れる。

(6)適地及び栽培上の注意

 北海道一円に適する。
・褐色心腐が発生することがあるので、乾燥しやすい圃場への作付を避け、培土の仕方などに注意し、石灰不足にも注意する。

開花期前から、頂部葉の基部が淡緑化し、葉の縁が巻くことがあるので、採種栽培時のウイルス抜取りを早めに実施し、アブラムシの防除を徹底すること。
・地温が10℃以下になると、収穫時の打撲傷がキュアリングされないので、収穫をあまり遅らせない。

育成従事者

村上紀夫、奥山善直、浅間和夫、入谷正樹、松永浩、千田圭一



文献及び関連Web

村上紀夫、奥山善直、浅間和夫、伊藤平一、入谷正樹、松永 浩、千田圭一.ばれいしょ新品種「ムサマル」の育成について”.北海道立農試集報.66:35-48(1994) 

三浦豊雄 編.“農作物優良品種の解説 (1987-1995)”.北海道立農業試験場資料 第26号(1996).北海道立中央農業試験場


ばれいしょ「根育22号」(ムサマル)  (成績概要書)

ばれいしょ品種の形態及びウイルスの病徴 (1) (独立行政法人種苗管理センター



ジャガイモ品種「ムサマル」ジャガイモ博物館(浅間和夫氏による解説))



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