ヨウラク

登録番号 農林認定 ばれいしょ農林8号 1958
種苗法 
北海道優良品種 ばれいしょ北海道第 号
地方番号 北海17号
系統名 島系272号  
系統番号 48005-83  
組合せ 41089-8×農林1号 (1948 北海道農業試験場) 系譜図

花 (北見農試) 草姿 塊茎 (北見農試)
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(1)来歴

 昭和23年(1948)に農林省札幌農事改良実験所島松試験地において、疫病に強いメキシコ原産の野生種S.demissumに栽培種を戻し交雑した種間雑種「41089-8」を母、「農林1号」を父として人工交配を行い、昭和26年(1951)に実生を養成し、以降選抜を重ねたものです。昭和30年(1955)に「島系272号」、その翌年に「北海17号」として関係県に配布して生産力及び地方適否を試験した結果、昭和33年(1958)に澱粉原料用の新品種として登録され、「ヨウラク」と命名されました。品種名は、いもの着き方が他の品種と異なり、1本のふく枝にいもが数個つながり、しかも表皮が赤く、あたかも装身具の「瓔珞(ようらく)」に似ていることによるものです。
 わが国初の種間雑種による育成品種でしたが、Yウイルスに対する病徴が現れず潜在性となる場合が多いことが増殖の過程で明らかになり、圃場において保毒株を完全にとり除くことが困難であったことから、生産者の手元にとどくことなく消えていった悲劇の品種です。昭和43年(1968)に優良品種からも廃止されています。
系譜図

(2)形態的特性

 茎長は「農林1号」、「紅丸」よりやや長く、よく繁茂し強剛ですが、徒長はせず倒伏には比較的強い。茎は太く、茎数は少ない方ですが、分枝、側枝の発生が極めて多い。茎には淡紫の着色があります。葉色は濃緑です。葉は小さく葉面は皺状を呈し、葉数が多く密生します。花は小さく淡紫色で、裏面の方が濃い。花数は多く開花期間も長い。
 いもの形は球形で、皮色は淡赤ですが、時期を経るにしたがい漸次濃紫色に変わります。目は濃赤ないし紫色を帯びています。目は深く、目数もやや多い。肉色は白い。

(3)生態的特性

 休眠は比較的長い。熟期は「紅丸」や「農林1号」より約20日遅い極晩生です。大粒のいもが多く粒ぞろいも良い。収量は「農林1号」や「紅丸」よりも増収することが多く、肥沃地で多収を示します。澱粉価は「農林1号」より3〜4ポイント高く、澱粉原料用に適しています。

(4)病害虫抵抗性

 疫病には比較的強く、抵抗性遺伝子R4を持っています。ウイルス病には弱く、特にYウイルスに対しては、X、Y両ウイルスに複合感染した場合にはほとんどが激しいれん葉症状を現しますが、Yウイルスだけに感染したものは葉脈透明状のモザイクを現すのは一部だけで、明瞭な病徴を現さず潜在性となるものがあり、採種上致命的な欠点になりました。
 高温や乾燥に弱く、中心空洞を生じやすく二次生長によりこぶができることがあります。

(5)品質特性

 蒸しいもは粉質で食味も良いが、中心空洞や二次生長がみられるため食用には向きません。

(6)適地及び栽培上の注意

 北海道一円およびこれに準ずる山間高冷地帯が適地とされ、肥沃地においてよく特性を発揮しますが、瘠地や泥炭地などでは不適とされました。
・吸肥性が強いので、輪作や後作に留意するとともに、「紅丸」や「農林1号」より20〜30%の増肥を必要とします。栽植密度は「紅丸」や「農林1号」と同様でよい。ウイルス病に弱いので種子更新には特に留意を要する。

育成従事者

永田利男、那須千一郎、関山治男、金川直人



文献及び関連Web

秋元喜弘.“悲劇のジャガイモ品種「ヨウラク」”.いも類振興情報.36(1993.7)



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