登録番号 | 農林認定 | ばれいしょ導入1号 | 1954. 4 |
種苗法 | − | ||
北海道優良品種 | (1945-1959) | ||
原品種名 | Kennebec | ||
地方番号 | |||
系統名 | |||
系統番号 | USDA B 70-5 | ||
組合せ | 男爵薯×Pepo (1937 北海道農事試験場) | 系譜図 |
花 (田中智) | 草姿 (根釧農試) | 塊茎 (田中智) |
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「ケネベック」は1940年にPlant Industry Station, Beltsville, Marylandにおいて「B127」を母、「USDA
X96-56」を父として交配し、「B70-5」の系統名で選抜され、1948年「Kennebec」と命名公表された品種です。
わが国には、昭和21年(1946)4月に連合国軍総司令部天然資源局要員ボスウエル氏(Boswell, V.R.)によって農林省農事試験場東北支場刈和野試験地にもたらされ、その約1年後に同じくホイラー氏(Wheeler,
F.J.)により農林省札幌農事改良実験所島松試験地に入れられたものです。その後同地で隔離栽培ならびに特性を調査し、昭和25年(1950)より地方適否を試験するため関係府県に配布し、試験の結果優良と認められたことから、昭和29年(1954)に「ばれいしょ導入1号」として登録されました。
ピークの昭和35年(1961)には東北・関東を中心に4,134ha作付されていましたが、現在は栽培されていません。北海道では昭和43年(1968)に優良品種から廃止されました。
(系譜図へ)
茎長は「農林1号」と「紅丸」の中間で、茎は極めて太く茎数が少ない。茎葉の繁茂は生育盛期に入ると極めて旺盛となり、「農林1号」などよりさらに強剛です。そう性はやや開張、草勢は極強で生育末期には倒伏することが多い。生育盛期、特に高温時に干ばつにあうと、葉が巻き上がることがあります。
ふく枝は「農林1号」より長く、いもの着生はやや疎なので、掘り取り時には注意が必要です。いもは淡黄色で長楕円形を呈しやや扁平となることがあります。目は浅く数も少なく、外観は「農林1号」や「紅丸」より優れています。肉色は白い。
萌芽が比較的遅く、初期生育も貧弱です。成熟期は極晩生に属し、「農林1号」や「紅丸」より10日前後遅く、降霜まで枯れないこともあります。
いも数は少ないですが、大いもの割合が極めて多く、粒ぞろいは良好です。いもの収量は「農林1号」や「紅丸」よりも多く、特に寒冷地帯でそれが顕著ですが、暖地では「男爵薯」に劣る場合が多い。澱粉価は「紅丸」より1ポイント程度低いですが、澱粉収量は多い。休眠は比較的長く、貯蔵性があります。
環境の変化に対しては「農林1号」などよりやや感受性で、安定性にやや欠け年次による変異も小さくはありません。特に、高温や干ばつに対して弱く、冷涼な気候を好む傾向があります。やせ地よりも肥沃地で能力を発揮します。
疫病抵抗性主働遺伝子R1を持つため、導入当時は疫病の発病はみられませんでしたが、本品種が栽培されるようになって2〜3年後にはこれを侵す新しいレースが発生するようになり、現在では特に強くはありません。軟腐病は比較的少ない。PVY-Oの接種に対してはえそ型の反応を示し、次代の感染は少なく抵抗性は強い。PVXには弱い。葉巻病には罹病しやすい傾向がありますが、感染当代、次代とも巻き上がりが弱い。アメリカではPVAに強く、net-necrosisにも強いとされ、そうか病にはかかりやすいといわれています。二次生長は比較的少なく、褐色心腐もあまりありませんが、中心空洞が発生しやすい欠点があります。
食味は良くありませんが、淡白で嫌味がありません。煮くずれが少ないので調理用に適しています。
澱粉粒子は比較的不ぞろいで、「農林1号」や「紅丸」より品質的に劣り、澱粉原料用に適しているとはいえません。
食用ならびに工業原料用として、北海道内、特に道北、道東の冷涼地及び東北地方、暖地の高冷地帯に適します。
・高温乾燥のやせ地では期待に反することが多いので注意が必要です。
山口辰一郎、福居文男.“馬鈴薯新優良品種「ケネベツク」”.北農.21(7),191-194 (1954)
田口啓作.“終戦後本邦に取入れられた馬鈴薯品種とその特性”.農業及園芸.28(12):1393-1395 (1953)