らんらんチップ
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花 (北農研) |
草姿 |
塊茎 (北農研) |
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らんらんチップ(左)とトヨシロ(右)のポテトチップ(北海道芽室産10℃貯蔵2月末)
※元画像から2品種の間隔を修正しています
用途 |
加工食品用(ポテトチップ) |
長所 |
- ポテトチップカラーが優れる
- ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ
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短所 |
- 休眠期間が中なので、長期貯蔵には適さない。
- 「トヨシロ」よりやや低収である
- 打撲に弱い
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(1)来歴
ばれいしょ「らんらんチップ」は旧農林水産省北海道農業試験場(現(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター)において、早生でジャガイモシストセンチュウ抵抗性で白肉の生食用品種育成を目標として、「とうや」を母、「83068C-51」を父として平成3年(1991)に交配採種し、翌4年播種した実生集団より選抜された系統です。
母の「とうや」は、黄肉でジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を二重に有し、早生で早期肥大性があり、大粒で多収です。父の「83068C-51」は白肉でジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有し、でん粉原料用で澱粉価が高い系統です。
平成5年に圃場で第二次個体選抜試験を行い、平成6年には「91018-44」の名で系統選抜試験に供試、平成7年に生産力検定予備試験、平成8年より生産力検定試験に供試し、平成9年に有望と判定し、「島系592号」を付しました。平成10年より生食用系統として生産力検定試験に加えて系統・地域適応性検定試験および特性検定試験に供試しました。収量性などは優れていましたが用途面で既存生食用品種と比べた優位性が乏しく、チップやフライが優れていたため、平成12年より加工用(チップ)に用途を換えて試験を継続しました。平成13年に「北海89号」の地方番号を付して、平成14年より北海道の奨励品種決定基本調査、平成15年より同現地調査に供試し、チップ用品種としての実用性について検討してきました。
平成16年度北海道農業試験会議において北海道の優良品種(普及奨励)への採用、平成16年度夏畑作物品種審査会において命名登録が決定し、平成17年9月に「らんらんチップ」の名で命名登録されました。 命名の由来は、いもの形が倒卵であることと、用途のチップを示しています。
系譜図
(2)形態的特性
そう性は“やや直立”で、茎長は「トヨシロ」並の“中”です。茎色は“緑”で二次色は“無”、茎の太さは「トヨシロ」より太い“太”に属し、分枝数は“やや少”です。小葉の色は「トヨシロ」と同じ“淡緑”ですが、小葉の形は「トヨシロ」より広い“広”、小葉着生の疎密は“中”です。開花数は「トヨシロ」より少ない“”少、花色は「トヨシロ」と同じ“白”で、自然結果は“稀”です。いもの形は“倒卵形”で皮色は“黄褐”、目の深さは“浅”、目の数は“少”で肉色は“黄白”です。
(3)生態的特性
茎葉の熟性は「トヨシロ」並の“中早生”です。塊茎の粒揃いは「トヨシロ」並の“やや整”、上いも重は「トヨシロ」並の“中”、上いも数は「トヨシロ」よりやや多い“”やや多で、上いも平均一個重は「トヨシロ」より小さい“やや小”で、澱粉価は「トヨシロ」並の“中”です。休眠期間は「トヨシロ」より短い“中”です。塊茎の生理障害では、中心空洞と二次生長は“無”、褐色心腐と裂開が“微”です。打撲には「トヨシロ」より弱い。
鹿児島県においても「トヨシロ」と同様の生育と収量です。
(4)病害虫抵抗性
Yモザイク病抵抗性は“弱”です。疫病圃場抵抗性は“弱”ですが、疫病による塊茎腐敗抵抗性は「トヨシロ」よりも強い“強”です。そうか病抵抗性は“弱”です。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子“H1”を持ち、汚染地での栽培は同線虫密度の低減し、未発生地では汚染の拡大を未然に防ぐ効果があります。
(5)品質特性
水煮による煮崩れの程度は「トヨシロ」よりやや多い“中”、調理後の肉質は「トヨシロ」と同じ“やや粉質”です。チップ・フライの褐変程度は「トヨシロ」並の“微”で、チップに適し用途は“加工用”です。ポテトチップは、北海道産の貯蔵前後、鹿児島県産においても、焦げが少なくチップカラーが「トヨシロ」より優れています。しかし、休眠期間が“中”で、貯蔵後の芽の伸びが「トヨシロ」より早いため、長期貯蔵には向かず、翌年2月までの利用に適しています。「トヨシロ」と同様に、低温貯蔵下における難糖化性は持っておらず、9℃以上での貯蔵に適しています。
(6)適地及び栽培上の注意
普及見込地帯:北海道の加工原料用ばれいしょ栽培地帯
北海道で「トヨシロ」を秋まき小麦の前作に作付けしている地域では同様に栽培可能。また、本州以南でも栽培可能。
・栽植密度に対する反応が大きく、疎植では収量低下の度合いが大きいので避ける。
・「トヨシロ」より打撲に弱いので、収穫や移送時に打撲を与えないように注意する。
・目数が少ないので、種いもを切断する場合は頂芽の位置に十分注意する。不均等な切断により、茎数の減少、萌芽の不揃いを招き、疎植反応から収量低下に繋がる場合がある。
育成従事者
森元幸、高田明子、小林晃、津田昌吾、高田憲和、梅村芳樹、中尾敬、吉田勉、木村鉄也、米田勉
百田洋二、串田篤彦、植原健人
文献及び関連Web
高田明子・森 元幸・小林 晃・津田昌吾・高田憲和・梅村芳樹・中尾 敬・吉田 勉・木村鉄也・米田 勉・百田洋二・串田篤彦・植原健人.“ポテトチップ用ばれいしょ新品種 「北海89号」”.平成16年度 新しい研究成果-北海道地域-.90-93(2005.7)
らんらんチップ (北海道農業研究センター 農作物品種命名登録情報)
ポテトチップ用で中早生のばれいしょ新品種「北海89号」 (北海道農業研究成果情報(2005))
ばれいしょ新品種候補「北海89号」 (PDF版) (北の農業情報広場)
ポテトチップ加工原料用ばれいしょ新品種「らんらんチップ」 (北海道農業研究センター生まれの作物たち 北海道農業研究センター育成品種一覧)
ポテトチップ用ばれいしょ新品種 「らんらんチップ」 (北海道農研News 第12号 (2006.3))
ばれいしょ「らんらんチップ」 パンフレット (北海道農業研究センター)