登録番号 | 農林認定 | ばれいしょ農林31号 | 1992. |
種苗法 | 第4232号 | 1995. 1.26登録 2010. 1.27満了 |
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北海道優良品種 | ばれいしょ北海道第21号 | 1992. 3.21 | |
地方番号 | 北海70号 | (1988) | |
系統名 | 島系546号 | ||
系統番号 | 81024-12 | ||
組合せ | R392-50×WB77025-2 (1981 北海道農業試験場) | 系譜図 |
花 (北見農試) | 草姿 (北見農試) | 塊茎 (北見農試) |
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用途 | 食用 |
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長所 |
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短所 |
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昭和56年(1981)に北海道農試において、早生大粒食用の耐病害虫品種の育成を目標に、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性系統「R392-50」を母、Yモザイク病抵抗性の種間雑種系統「WB77025-2」を父として交配し、翌年より選抜を開始したものです。昭和63年(1988)には「北海70号」の地方番号を付与し、実用性を検討してきた結果、平成4年(1992)に「ばれいしょ農林31号」として登録、主産地を期待している道南地方の湖の名前(洞爺湖)にちなんで「とうや」と命名されました。「黄爵」の名前で売られていることもあります。
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種の中で最も早期出荷に適した品種です。特に粘質のいもが好まれる関西・九州方面で評価が高まりつつあります。
平成26年(2014)年の北海道における作付面積は1,459haで、緩やかに増加を続けています。
(系譜図)
萌芽時の葉色は赤色を帯びる。茎長は「男爵薯」よりやや長く、そう性はやや直立型です。茎は太く数は少ない。茎色は緑色で基部に赤紫の分布があります。茎翼は直で、分枝は少ない。葉色は「男爵薯」よりやや淡い緑で、小葉の形は幅広く、大きさは大きく、光沢があり厚くてややでこぼこしています。小葉の着き方は「男爵薯」に比べるとやや疎で、全体としては粗剛な感じがします。花色は白で、大きさは中位です。花粉が多く、自然結果は中程度みられ、果実は大きく直径3cm以上のものもあります。
ふく枝の長さは短〜中で、ふく枝が太く、黄変期前の掘り取り時にはふく枝の離れが悪い。いも着はやや密で、深さは浅い。いもの形は球形で、目は「男爵薯」より浅くて少ない。皮色は黄褐色で、表皮がやや粗くネットがみられます。肉色は黄。
いもの休眠は「男爵薯」並でやや長い。萌芽期及び初期生育は「男爵薯」並ですが、茎数が少なく着葉がやや疎のため生育不良にみえることがあります。塊茎形成始期は「男爵薯」より遅いですが、その後の肥大は「ワセシロ」と同様に早い。枯凋期は「男爵薯」並か数日早い早生です。茎葉の二次生長は無く、均一に黄変します。倒伏は少ない。
株当りいも数は少ないですが、大いもが多く、上いも平均一個重は「男爵薯」より大きく「ワセシロ」よりやや小さい。早掘り時の大いも比率も「ワセシロ」並です。いもの粒ぞろいは良い。上いも収量は、早掘り、普通掘りとも「男爵薯」及び「ワセシロ」より多く、中以上いも収量では「男爵薯」より多く「ワセシロ」並です。澱粉価は「男爵薯」より0.5〜1ポイント低い。施肥量及び栽植密度に対する反応は鈍く、多肥や疎植でも過繁茂になることはありませんが、いもの大粒化が著しいので、L規格いもをそろえるには密植が適します。
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を有し(推定遺伝子型H1H1hh)、パソタイプRo1に抵抗性です。疫病抵抗性遺伝子型はR1、圃場抵抗性は弱く、疫病発生後の経過は「男爵薯」、「ワセシロ」とほぼ同様です。疫病による塊茎腐敗は「男爵薯」より多発しやすく、抵抗性は弱ないし極弱です。生育後半の夏疫病の発生は「男爵薯」並です。ウイルス病の自然感染率は少ないですが、Yモザイク病に対しては、PVY-O接種による第1次病徴はモザイク症状を現し病徴が現れにくく、PVY-Tによる病徴は現れません。葉巻病の第1次病徴は「男爵薯」より弱く現れます。そうか病にも一般品種並に弱く、粉状そうか病抵抗性は極めて弱い。青枯病抵抗性はやや強です。3L以上の特大いもでも中心空洞は発生しませんが、褐色心腐は「男爵薯」よりいくぶん少なめですが、大いもに発生することがあり、中心部えそ型となります。裂開がみられることがあります。
いもが球形で、目が浅く大いものそろいが良いので、剥皮しやすく歩留りも高く、また酵素による剥皮褐変も少ないので一次加工などの業務用にも適します。肉質はやや粘質で、舌ざわりはきわめて滑らかです。煮くずれは「男爵薯」や「ワセシロ」より少なく、調理後黒変はみられません。「キタアカリ」のような香りや、「男爵薯」や「農林1号」のようなジャガイモ臭は少ない。食味の評価は、好みによって異なり、粉質好みの人は低く、粘質を好む人は高く評価する傾向にあります。蒸しいもにすると水っぽいですが、煮物やサラダ(スライスサラダ)、リヨネーズなどに向いています。ポテトチップやフライには向かない。ビタミンC含量は「キタアカリ」より少ないが「男爵薯」及び「ワセシロ」より多い。グリコアルカロイド含量は「男爵薯」より多く、特に曝光による増加が「メークイン」並に多い。
北海道一円に適します。
・裂開や澱粉価の低下を防ぐため、多窒素を避けて5,000株/10a程度の密植とする。
・浴光催芽を十分に行い、初期生育の促進に努めること。
・いも着きが浅く「男爵薯」に比べ緑化いもになりやすいので培土などに注意すること。
・マルチングなどの促成栽培に向きますが、大いもに裂開が発生することがあるので急激な肥大を促す条件下では注意が必要です。
・澱粉価の上昇しづらい肥沃地、湿地では栽培しない。
・生育を促進させて、疫病の発生前に収穫することで無農薬・減農薬栽培が可能です。
梅村芳樹、西部幸男、入倉幸雄、森元幸、三井康、清水啓、内沢啓、佐藤正人、米田勉
三浦豊雄 編.“農作物優良品種の解説 (1987-1995)”.北海道立農業試験場資料 第26号(1996).北海道立中央農業試験場
滑らかな肉質で変色が少ない大粒ばれいしょ「とうや」 (北海道農業研究センター生まれの作物たち 北海道農業研究センター育成品種一覧)