ユキラシャ

登録番号 農林認定 ばれいしょ農林42号 2000.10.25
種苗法  第11097号 2003.3.17登録
北海道優良品種 ばれいしょ北海道第36号 2000. 3. 7
地方番号 北海83号 (1997)
系統名 島系582号   (1996)
系統番号 91044-20
組合せ Early Gem×86002-100 (1991 北海道農業試験場) 系譜図

花 (北見農試) 草姿 (北見農試) 塊茎 (北見農試)
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そうか病汚染ほ場における、「男爵薯」と「北海83号」の塊茎の比較。

用途 食用
長所
  • そうか病抵抗性が強い。
  • 白肉で剥皮・調理時の変色が少ない。
  • いもの休眠期間が長く、貯蔵性が良い。
短所
  • ジャガイモシストセンチュウに感受性。
  • 休眠が長いため、萌芽及び初期生育が遅い。
  • いもが裂開することがある。




(1)来歴

 平成3年(1991)に北海道農試において、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ食用品種の育成を目標に、ラセット皮を有しそうか病に強い「Early Gem」を母、S.tuberosum ssp. andigenaS.demissumS.stoloniferumS.commersoniiに由来する種間雑種系統「86002-100」を父として交配して、翌年に実生を養成したものから選抜されたものです。平成8年(1996)に「島系582号」、平成9年(1997)に「北海83号」として食用品種としての実用性を検討した結果、平成12年(2000)に北海道の奨励品種に決定し、ばれいしょ農林42号として登録され「ユキラシャ」と命名されました。作付面積は数ha程度です。
系譜図

(2)形態的特性

 茎長は「男爵薯」より長く「農林1号」より短いやや短です。茎の太さは「男爵薯」、「農林1号」より太い。茎色は緑で2次色は無く、分枝数は少なく、そう性は中間型です。葉色は「男爵薯」及び「農林1号」より淡い淡緑です。小葉の大きさは「男爵薯」並の大で、小葉着生の疎密は中です。花色は白で、開花数は「男爵薯」及び「農林1号」より少ない中です。花粉量は少なく、自然結果することはまれです。
 いもは楕円体です。皮色は褐色で表皮は粗く、ラセット皮が特徴です。目の深浅はやや極浅です。肉色は白い。

(3)生態的特性

 いもの休眠期間は「男爵薯」より50日程度長い極長です。萌芽期及び開花期は、ともに「男爵薯」及び「農林1号」より遅い。熟性は「男爵薯」より遅く「農林1号」より早い中早生です。いもの早期肥大性は「農林1号」並の中です。上いも数は「男爵薯」及び「農林1号」並の中で、上いも平均一個重は「男爵薯」並の小です。いもの粒ぞろいは「農林1号」並のやや整です。いもの収量は「男爵薯」より少なく、中以上いも収量は育成地では「男爵薯」をやや上回っていたものの、他の試験機関では「男爵薯」の9割程度です。澱粉価は「男爵薯」より高く「農林1号」並の中です。

(4)病害虫抵抗性

 疫病圃場抵抗性は「男爵薯」よりやや強いやや弱で、疫病による塊茎腐敗抵抗性は「男爵薯」及び「農林1号」より強いやや強です。そうか病抵抗性は「男爵薯」及び「農林1号」より強い強で、「スタークイーン」より強い粉状そうか病抵抗性は「男爵薯」及び「農林1号」より強い強です。葉巻病抵抗性は「男爵薯」及び「農林1号」より強い中です。Yモザイク病抵抗性は「男爵薯」並の弱です。ジャガイモシストセンチュウには感受性です。褐色心腐は「農林1号」より少なく「男爵薯」並の微です。中心空洞は「男爵薯」より少なく「農林1号」並の微です。二次生長は無です。いもの裂開は「男爵薯」及び「農林1号」より多い。打撲耐性は「男爵薯」よりやや弱く「農林1号」並のやや弱です。

(5)品質特性

 剥皮歩留りに対するトリミング数は「トヨシロ」や「男爵薯」より少なく、剥皮特性は優れています。剥皮褐変も「男爵薯」や「農林1号」よりも少ないことからカットやプレピール等の業務向け一次加工に適しています。調理後の肉質はやや粉質で、煮くずれの程度は「男爵薯」及び「農林1号」より多い多なので、長時間の煮込み料理には適していません。調理後黒変は「男爵薯」及び「農林1号」より少ない微です。食味は中です。
 チップ・フライの褐変程度は「男爵薯」及び「農林1号」よりも多く、油加工適性は低い。

(6)適地及び栽培上の注意

 適地:寒地・寒冷地 (北海道一円)
・休眠期間が長いため通常の種いも貯蔵では萌芽及び初期生育が遅れやすいので、下記のような扱いが必要です。
 1)休眠期間を短くするために、収穫後D型ハウスなどで仮貯蔵し、凍結の恐れの生じる10月中旬頃までに本貯蔵とする。
 2)休眠明けを早めるために、3月上旬から10℃以上20℃を上限として貯蔵温度を高くし、また早めの種いも切断を行う。
・ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有していないので、汚染地域では栽培しない。
・いもが裂開することがあるので、過剰な施肥など急激な肥大を促す栽培管理を行わない。

育成従事者

森元幸、梅村芳樹、小林晃、高田明子、津田昌吾、高田憲和、中尾敬、吉田勉、木村鉄也、米田勉



文献及び関連Web
Akira Kobayashi, Akiko Takada, Shogo Tsuda, Norikazu Takada, Yoshiki Umemura, Takashi Nakao, Tshutomu Yoshida, Tetsuya Kimura, Tsutomu Maida. "Breeding of Yukirasha : Common Scab-Resistant Potato Variety for Table Stock".Breeding Science.52:327-332 (2002)

小林晃、森元幸、高田明子、津田昌吾、高田憲和、梅村芳樹、中尾敬、吉田勉、木村鉄也、米田勉.“そうか病抵抗性ばれいしょ新品種候補系統「北海83号」.平成11年度新しい研究成果−北海道地域−.44-46(2000).


ばれいしょ新品種候補系統「北海83号」 (成績概要書)
そうか病抵抗性ばれいしょ新品種候補系統「北海83号」 (ユキラシャ) (研究成果情報 北海道農業)

世界最高レベルのジャガイモそうか病抵抗性品種「ユキラシャ」 (北海道農業研究センター生まれの作物たち 北海道農業研究センター育成品種一覧


ばれいしょ品種の形態及びウイルスの病徴(2) (独立行政法人種苗管理センター

馬鈴薯: 「北海79号」 「北海83号」 「P971」 (平成11年度十勝圏農業新技術セミナー


ユキラシャ (ジャガイモ博物館

じゃがいも学入門 個性が際立つニューフェースたち (ホクレン情報誌 GReen No.202 (2002.9))





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