登録番号:【農林】ばれいしょ農林35号 (1994. 8) 【種苗法】第5068号 (1996. 6.13)
地方番号:西海23号
系統名 :長系98号、愛系27号
系統番号:T8817-5
用途 | 食用 (暖地二期作用) |
---|---|
長所 |
|
短所 |
|
昭和63年(1988)に長崎県総農林試愛野馬鈴薯支場の春作において、そうか病と青枯病に強い良食味品種の育成を目標に、暖地の主要品種である「デジマ」を母、そうか病に耐病性を示すアメリカの赤皮品種「ノーランド(Norland)」を父として交配を行い、同年秋作より選抜を開始したものです。平成3年(1991)秋作から「西海23号」の地方番号を付与して検討を続けた結果、平成6年(1994)に「ばれいしょ農林35号」として登録され「アイノアカ」と命名されました。品種名の由来は育成地が愛野(アイノ)でいもの表皮が淡赤色(アカ)で愛らしい外観を示すことを表現しています。
(系譜図へ)
茎長は「デジマ」や「農林1号」よりも短く、春作ではやや短に属します。茎数は春作では「デジマ」より多いですが、秋作では少ない。茎の太さはやや太く、茎は紫色を帯びます。小葉はやや濃緑で、葉軸は赤味を帯びます。小葉の大きさは「デジマ」より小さく、着生の疎密は中です。花色は淡赤紫で、春・秋とも開花しますが、秋作では花数が少ない。花粉稔性があり、圃場で自然結果します。
いも着は「デジマ」並のやや疎でいもの着生位置もやや深いので、機械収穫による切断が発生することがあります。いもは楕円ないし短楕円体で凹凸がきわめて少ない。皮色は淡赤、目の色は皮色より濃い赤です。目は「デジマ」よりやや浅い浅に属し、形状の整否が「デジマ」よりも優れ、粒ぞろいも非常に良いので外観は「デジマ」以上に優れています。肉色は淡黄で「デジマ」よりやや淡い。
いもの休眠期間は年次や作期により若干変動がありますが「デジマ」より5日程度長く、春作産が約70日、秋作産は105日程度です。萌芽期は、春作では「デジマ」並に早く、秋作では「デジマ」よりやや遅く「ニシユタカ」より早い。春作での生育は、初期の茎長の伸びが良く「デジマ」より早く茎葉重が増加しますが、中期には茎葉重の増加が鈍化し、萌芽後50日頃に「デジマ」に追い越されます。「デジマ」が生育後期まで茎葉の伸長を続ける晩生品種であるのに対し、「アイノアカ」は生長が早く熟性は中生に属します。
春作におけるいもの早期肥大性が優れ、萌芽後60日頃までは「デジマ」より収量性に優れています。その後は「デジマ」に追い越されますが「農林1号」より2割程度多収です。秋作では低収になりやすい。株当りのいも数が多く、一個重は春秋とも「デジマ」より小さくMサイズの比率が高い。澱粉価は、春作では「デジマ」より高く、秋作では「デジマ」並かやや低い。
青枯病抵抗性はやや強で「デジマ」及び「ニシユタカ」より明らかに強い。乾腐病や疫病等による塊茎腐敗は「デジマ」より少なく、「ニシユタカ」並に強い。疫病抵抗性は「デジマ」、「ニシユタカ」並の弱です。粉状そうか病抵抗性は「ニシユタカ」より強く「デジマ」並のやや弱です。そうか病抵抗性は中〜やや弱ですが、「デジマ」や「ニシユタカ」に比べると罹病度が低く相対的に強い。ウイルス病の症状は、ほとんどが葉巻、れん葉モザイク、葉脈間透明状黄化で、葉脈間えそはみられません。「デジマ」に比べ病徴がはっきりしているので、罹病株の抜き取りは比較的容易で圃場での感染率も低い。ジャガイモシストセンチュウには感受性です。いもの裂開や二次生長は「デジマ」より明らかに少なく、「ニシユタカ」並に少ない。
「デジマ」に比べて凹凸が少なく目が浅いので剥皮が容易で剥皮歩留りが高いのが特徴で、剥皮褐変も少ない。肉質は「デジマ」よりやや粉質ですが、煮くずれしにくく、煮くずれが少ない割に火の通りは早い。調理後黒変は無い。暖地品種の中ではビタミンCが多く、「デジマ」の2倍弱含まれています。食感は「デジマ」よりやわらかく、食味は「デジマ」並に優れており、あっさりして甘味が少ない。
くせが無く、ほとんど煮くずれしないので、カレーやシチューのほか、ベーコンを使った洋風肉じゃが、ソーセージとのソテー、チーズとポテトのグラタンに合います。肉質がやわらかいので味もしみやすい。また、シャキシャキサラダにも使え、従来の暖地向け品種よりポテトチップなどの油加工適性も良い。
長崎県全域、特に島原半島、諫早北高地域及び西彼、県北、五島地域に適します。
・やや早生種で茎長が短く生育量が少ないので、特に生育を良くするため土壌pHを4.8前後の適正値に保ち、完熟堆肥の施用等肥培管理に留意する。
・個数型でいもの一個重が小さいので、春作では大いも化を図るために種いもの齢に注意し、休眠が明けすぎて茎が多くならないようにするとともに、10a当たり5,600株程度の比較的疎植にする。春作では、休眠明け直後の若い種いもを用い、マルチ栽培することで早期収量を高めることができます。
・秋作では、生育期間中に乾燥しやすく茎長が短くなり過ぎる傾向があり、いもの肥大も劣るので堆肥を施用して地力培養に努めることが必要です。また、5月中下旬に収穫され休眠明けの早い春作マルチ栽培産の種いもを用いて萌芽期を早め、十分な生育量を確保することがポイントです。
・そうか病や青枯病に対しては「デジマ」よりやや強いですが、種いも消毒などの基本的な防除策を講ずるとともに、短期輪作等による圃場の菌密度低下につとめる
・無理な早掘りは、いもの皮剥けを生じ、赤皮という商品性を損なうのでできるだけ完熟させて収穫すること。
・いもの着生位置がやや深く、機械収穫による切断が発生しやすいので浅植えし、培土を高くして深めに掘り取ることが必要です。
△長崎(認定品種)
田渕尚一、小村国則、石橋祐二、茶谷正孝