登録番号 | 農林認定 | ばれいしょ農林25号 | 1981. 6 |
種苗法 | 第197号 | 1982.2.3登録 1997.2.4満了 |
|
北海道優良品種 | ばれいしょ北海道第16号 | 1981. 4.16 | |
地方番号 | 北海60号 | (1977) | |
系統名 | 島系516号 | (1976) | |
系統番号 | 70169-119 | ||
組合せ | トヨシロ×北海51号 (1970 北海道農業試験場) | 系譜図 |
花 (北見農試) | 草姿 (北見農試) | 塊茎 (北見農試) |
画像をクリックすると大きな画像が表示されます。 |
用途 | 加工食品用 (フレンチフライ) |
---|---|
長所 |
|
短所 |
|
良質多収の食用品種の育成を目標に、昭和45年(1970)に北海道農業試験場において、加工食品用品種「トヨシロ」を母、いもが長く還元糖含量が少ない「北海51号」を父として交配し、翌年より実生個体選抜を開始し選抜を重ねて育成された品種である。昭和51年(1976)に「島系516号」、昭和52年(1977)には「北海60号」の地方番号を付して生産力、適応性、病害虫抵抗性、食品加工適性などについて検討した結果、昭和56年(1981)に「ばれいしょ農林25号」として登録された。北海道で育成された初めての黄肉のフレンチフライ用品種であることから、地名の一部「ホッカイ」とフライ色の「コガネ」を組み合わせて「ホッカイコガネ」と命名された。
従来フレンチフライ原料に用いられていた「ユキジロ」や輸入品のフレンチフライの原料品種として有名な「Russet Burbank」や「Bintje」はいずれも白肉であったため、黄肉の「ホッカイコガネ」に対する加工業界からの風当たりは非常に強かったが、「ユキジロ」は種いもの生産力が落ちて作付が急速に減少したこともあり、「ホッカイコガネ」の作付は次第に広がった。本来はフレンチフライ用だが、品質や食味が良いので「北海黄金」あるいはいもの形が「メークイン」のように長いので「黄金メーク」、「コスモメーク」などの名で食用として売られている。
平成26年(2014)の北海道における作付面積は1,580haで、その大部分は十勝地方で栽培されている。また、鹿児島県でも601ha(平成23年(2011)産)作付けされており、食用として出荷されている。
(系譜図へ)
萌芽時の葉色は紫色を帯びる。茎長は「トヨシロ」及び「農林1号」よりやや長く、茎の太さは「トヨシロ」並の中、茎色は緑で2次色は無い。茎翼は「トヨシロ」と同様の直である。そう性はやや直立型で分枝の数は中である。葉色は緑で、頂小葉の形は「トヨシロ」に類似し中間型だが、小葉は「トヨシロ」よりやや大きく、小葉着生の疎密は中である。花色は淡赤紫色で、花弁の先は白く、花の大きさは中で、花数は多い。花粉量も多く、自然結果は多い。
ふく枝の長さ及びいも着生位置は中で、ふく枝の離れは良い。いもの形は長楕円体で「ムサマル」より扁平で細長い。皮色は黄褐色で、表皮はやや粗くわずかにネットを帯びる。目は浅く、目の数は中程度である。肉色は淡黄である。
休眠期間は中だが、休眠明け後の芽の伸長は遅い。萌芽期及び初期生育は「トヨシロ」よりやや遅く、開花も遅い。いもの早期肥大性も「トヨシロ」に比べ遅い。枯凋期は「トヨシロ」に比べ2〜3週間遅く「農林1号」並の中晩生に属する。
上いも数は中で「ムサマル」よりやや多い。上いも平均一個重は「トヨシロ」より大きく「農林1号」並の大である。上いも収量及び中以上いも収量は「トヨシロ」より2〜3割多く「農林1号」並である。澱粉価は17〜18%で、「ムサマル」より低く「農林1号」並の中である。貯蔵性はやや良である。
疫病抵抗性遺伝子型はR1で、疫病圃場抵抗性は中程度である。塊茎腐敗は少なく、抵抗性は「トヨシロ」及び「農林1号」より強いやや強である。Yモザイク病に弱く、PVY-Oに罹病するとえそ型の病徴を現し、れん葉、えそ及び縮葉症状がみられる。PVY-Tに対する病徴は軽いれん葉を現す。PVAには感受性で病徴は現れない。PVX-bには感受性でモザイク症状を現す。PVSのモザイク系統には病徴を現さない。粉状そうか病抵抗性は強で、青枯病には弱い。ジャガイモシストセンチュウには感受性である。
褐色心腐、二次生長、裂開の発生は無い。中心空洞もほとんどみられず、300g以上の大いもにも生じない。
剥皮褐変は極めて少ない。肉質はやや粘質で舌ざわりも滑らかである。調理後黒変もみられない。煮くずれは「メークイン」より少なく、「メークイン」では煮くずれる澱粉価15〜16%程度のいもでも「ホッカイコガネ」はほとんど煮くずれしない。「ホッカイコガネ」が煮くずれしにくい原因としては、「ホッカイコガネ」では澱粉を多く含む細胞群が表層近くではなく維管束環内部にあること、細胞のサイズが小さく単位体積当りの細胞接着面積が大きいこと、さらに細胞間隙の量も少なく細胞分離が起こりにくい構造を持つことなどによると考えられる。食味は中の上でクセの少ない味である。煮くずれは少なくても澱粉価は十分に高いので水っぽさはなく、煮物やサラダに幅広く使える。
ビタミンC含量は「男爵薯」並か若干少ない。
還元糖含量が比較的少なく、低温貯蔵による還元糖の増加も比較的少なく、リコンディショニングも比較的容易である。また、塊茎の皮層部と中心部との澱粉含量の差が少ないので、フライ後の中折れも少ないと考えられ、フレンチフライの原料に適する。肉色が黄色いのでフレンチフライの色も淡黄となる。
全道に適し、食品加工原料として栽培されている「農林1号」や「男爵薯」におきかえる。
・初期生育の促進を図り、小いもの発生抑制のためやや疎植とする。
・形が長いので種いもの切断方法に「メークイン」並の注意が必要。
・粉状そうか病には強いが、青枯病や軟腐病には弱いので、排水の良い肥沃な土地などに栽培する。
西部幸男、坂口進、入倉幸雄、奥山善直、梅村芳樹
後木利三.“農作物優良品種の解説 (1978-1986)”.北海道立農業試験場資料 第18号(1987).北海道立中央農業試験場
西部幸男.“バレイショの新品種「ホッカイコガネ」”.農業技術. 36(2):557-559 (1981)
“−北海道農業試験場試験研究成果31選− 食品加工用バレイショ品種「トヨシロ」,「ホッカイコガネ」”.北海道農業試験場研究資料.23 (1983)
Chie MATSUURA-ENDO et. al. Disintegration Differences in Cooked Potatoes from Three Japanese Cultivars: Comparison of Starch Distribution within One Tuber and Tissue Structure. Food Science and Technology Research 8(3):252-256 (2002)
ばれいしょの煮くずれに関与する要因.平成11年度北海道農業試験会議(成績会議)資料 (2000.1)
ばれいしょの煮くずれに関与する要因 (Agriknowledge 農研機構研究成果情報)
北海道農業研究センター生まれの作物たち 北海道農業研究センター育成品種一覧 (2011.9.30)