登録番号:ばれいしょ農林22号
地方番号:西海14号
系統名 :長系81号
系統番号:T6581-21
異名:ゴールド(岡山県)
用途 | 食用 (暖地二期作、特に春作用) |
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長所 |
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昭和40年(1965)、長崎県総合農林センター愛野馬鈴薯センター(命名登録時には長崎県総合農林試験場愛野馬鈴薯支場に改称)の秋作において、黄肉良食味で収量性に優れる「西海10号」を母、澱粉価が低く食味は劣るものの春作での早期肥大性に優れる「ウンゼン」を父として交配を行ない、翌年春作に交配種子を播種して選抜を重ねたものです。育成地では生産力検定試験まで進んだ昭和44年(1969)に、秋作での収量があがりにくい欠点を持つとして試験を中止しましたが、春作での早期肥大性が優れ、黄肉で食味が良いなど特異な性格を持っていたので、岡山県での系統適応性検定試験において独自に検討が続けられました。そこで、昭和49年(1974)に育成地でも試験を再開し、昭和50年に「西海14号」として各地で特性検定試験等に供試した結果、秋作は少収であるが、春作では早期肥大性があり、食味・外観が優れていることが確認されたため、昭和52年(1977)に「ばれいしょ農林22号」として登録、瀬戸内地域での豊産を願い「セトユタカ」と命名され、岡山県で奨励品種に採用されました。
平成15年(2003)に岡山県などで春秋作合わせて13ha作付されています。
(系譜図へ)
そう性は「ウンゼン」に似て開張型で、茎長は「ニシユタカ」並で、「農林1号」や「タチバナ」より短い。茎数、分枝数も「農林1号」などより少ない。茎葉全体はやや軟弱で生育末期には倒伏しやすい。葉色はやや淡く、小葉はやや円形でやや大きく、「農林1号」や「タチバナ」よりやや疎に着きます。花色は白ですが、開花数、開花株とも少ない。
ふく枝の発生数は「デジマ」より少なく「農林1号」並か若干少ない程度ですが、ふく枝は短く「ウンゼン」とともに最も短い方に属しています。いもは株元にまとまって浅く着き、いも離れも良いので掘り取りは容易ですが、秋作ではふく枝が短くなりすぎていもの形がくずれる場合もあります。いもの形は扁球ないし球で皮色は黄〜淡黄色、表皮は滑らかで目は「デジマ」並に浅く、外観は非常に良い。肉色は「デジマ」より濃い黄色で、黄肉品種の中では「シマバラ」とともに濃い方です。
休眠期間は「デジマ」より5日程度長く「農林1号」よりわずかに短く、春作産で71日、秋作産で109日程度です。春作でのいもの肥大開始は最も早い方に属し、早期肥大性は極良好で「農林1号」、「男爵薯」及び「デジマ」より優れていますが、生育後半の肥大は鈍く「デジマ」より劣ります。秋作でのいもの肥大は「農林1号」より終始速く、「デジマ」に比べると11月上旬まで同等で11月中旬以降は劣ります。熟期は「農林1号」、「デジマ」より早く「シマバラ」より遅い中早生に属し、特に秋作では早い。
上いも数は「タチバナ」より多く「シマバラ」より少なく、「農林1号」と同程度の中です。上いも収量及び中以上いも収量は「デジマ」より少ない。澱粉価は育成地では春秋とも「農林1号」より少し低いか同程度で「デジマ」より高い場合が多く、「ウンゼン」、「タチバナ」より常に高い値を示しますが、岡山では「農林1号」、「デジマ」より低い。
疫病には弱く、抵抗性主働遺伝子も持っていません。青枯病に対する抵抗性は「農林1号」に次ぐ強さを持っており、暖地育成品種の中では最も強い方に属します。軟腐病に対しては中〜やや強く、「ウンゼン」、「タチバナ」と同等かそれ以上の抵抗性を持つとされていますが、春作いもの貯蔵中に軟腐病と思われる腐敗みられることがあります。粉状そうか病抵抗性は「デジマ」、「タチバナ」より弱いやや弱です。Yモザイク病の症状はPVY-Oに対してモザイク症状を呈し、PVY-Tには無病徴となるので注意が必要です。また、PVXと複合感染すると激しい縮葉〜れん葉症状を示します。PVX-oには感受性ですが、PVX-bには抵抗性です。PVSのモザイク系統に対しては明らかな病徴を示しません。葉巻病の病徴は明瞭で、罹病程度は「農林1号」並でやや弱い。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性は無い。
中心空洞や二次生長は少ないですが、粘質土壌や排水不良地では裂開が多発したりいもの肌も粗くなりやすく、多湿条件に弱い傾向があるようです。
肉質は中です。調理時の煮くずれは少なく、放熱後の黒変もみられません。食味は育成地では「デジマ」と同等かやや劣りますが、岡山では「デジマ」や「農林1号」より優れています。タンパク質、ビタミン含量が多く、カロチン含量は、同じ黄肉品種の「デジマ」の約2倍含まれています。「粉ふきいも」にはあまり適しませんが、裏ごしの状態や舌ざわりが良く、クリーム煮やサラダで味が良いので、和風料理よりもバター、牛乳、塩、コショウなどの味付けに良く合い、特に油を用いたものに向くなど、洋風料理に向きます。
暖地二期作地帯の中で、春作を重視し、収穫期に降雨が少ない地方に適すると考えられます。
・春作型の品種で、秋作の収量は低い傾向にあるので、秋作では密植による増収をはかる必要があります。
・春作での過度の多肥は、いもの腐れが出やすいので注意が必要です。
・圃場でのウイルス感染率が高いので、採種栽培には十分な防除管理を要します。
岡山
知識敬道、北野保樹、藤山俊計、宮本健太郎、田淵尚一、佐田満、小村国則、永尾嘉孝、西山登、室園正敏、石橋祐二
知識敬道.“馬鈴薯新品種「セトユタカ」の育成”.農業技術.32(11):510-512 (1977/11)