登録番号 | 農林認定 | ばれいしょ農林17号 | 1969. 5 |
種苗法 | − | ||
北海道優良品種 | ばれいしょ北海道第10号 | 1971.6.17登録 1984.3.19廃止 |
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地方番号 | 北海45号 | ||
系統名 | 島系475号 | ||
系統番号 | 59075-8 | ||
組合せ | 北海29号×Hochprozentige (1959 北海道農業試験場) | 系譜図 |
花 (北見農試) | 草姿 | 塊茎 (田中智) |
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昭和34年(1959)に北海道農試において、野生種S.demissumに由来し戻交雑3回の結果得られた疫病抵抗性主働遺伝子を持たない極晩生の高澱粉系統「北海29号」を母、ドイツから導入した超高澱粉品種「Hochprozentige」を父として人工交配を行い、選抜されたものです。昭和40年(1965)に「島系475号」、昭和41年(1966)に「北海45号」として澱粉原料用としての地方適否を検討した結果、昭和44年に「ばれいしょ農林17号」として登録され、「ビホロ」と命名されました。
画期的な高澱粉品種でしたが、春の萌芽日数が長く、多肥による増収効果が少なく、さらにいもが腐敗しやすいことなどから農家から敬遠されて作付は伸びず、昭和55年(1980)に68ha作付されたのが最大普及面積と思われます。昭和59年(1984)に優良品種から廃止されました。
(系譜図)
そう性はやや開張型で、茎長は「農林1号」より長く、茎数は4本前後で分枝が多く、太く強壮です。茎は緑色で一部に紫色の二次色が分布しています。萌芽時の葉色は濃緑で、生育が進むと緑色になります。小葉はやや幅が狭く、着生の疎密は中です。花は淡青色を呈し、花数は多く花粉も多い。
いも着はやや疎です。いもは球形に近い卵形で、形は整一ですが粒ぞろいは良くありません。皮色は淡褐でネットが強くかかります。目の深さは中です。
通常は10月上旬の霜により枯凋する極晩生品種です。茎が伸長する割には倒伏には強い。開花期前後に上位葉が内側に巻き、間もなく回復することがありますが、これはウイルス性のものではなく水分生理的なものと考えられます。
澱粉価が26%とわが国で育成された品種の中で最も高澱粉価を示します。上いも平均一個重は100g程度あり、超高澱粉価品種としてはほぼ満足できる大きさです。いも収量は「農林1号」の85%程度と少なく、多肥栽培での増収効果も大きいとはいえませんが、年次変異が少ない点は栽培上の優れた特性の一つに挙げられます。澱粉収量は生産力検定試験の4年平均で「農林1号」の33%増となっており、最高の水準にあります。
疫病抵抗性主働遺伝子は持ちませんが、茎葉の疫病には強く、無防除栽培でもかなりの収量をあげます。ウイルス病にはやや弱く、えそモザイクが目立ち、特性検定試験の結果では葉巻病の罹病が多いですが、採種管理を徹底すれば問題はありません。Xウイルスにはかなり強いようです。軟腐病にはやや強く、青枯病には弱いようです。褐色心腐その他の変色が出やすく、特に春先にはなはだしい。。
澱粉粒子の大きさは、従来の品種より格段に大きく、特に大粒のものの分布が多いので、澱粉原料として有利と思われます。
天北、上川北部、網走、十勝などのでん粉原料地帯
・既往の晩生澱粉原料用品種「ホッカイアカ」や「シレトコ」などより澱粉収量は上回り、疫病に対しては広義の圃場抵抗性を持つため、より安定した収量を得られ、ごく高澱粉のため収穫、運搬、澱粉製造の段階で省力、工場の歩留り向上に役立ちます。これらの理由から上記2品種の大部と徐々に交替していくべきものと考えます。
・ごく晩生で塊茎の肥大もおそいので、植付がおそく生育期間の短い地方では十分な能力を発揮しないおそれがあります。また、多肥による増収効果はあまり大きくありません。密植にし過ぎると地域や年次により小粒になる傾向があります。
・収量の年次変異が「農林1号」、「紅丸」のように大きくないため、一般にごく豊作年には差がありませんが、平年作またはそれ以下の年には大いに真価が発揮されるものと期待される。
・ストロンがやや長くいもの着生がやや疎なので「エニワ」に準じた注意が必要です。
・収穫、運搬に際して打撲傷を受けやすい。高澱粉含量のものは内部に変色が生じやすく越冬すると甚だしくなりますが、島松においては腐敗に至った例はなく、萌芽などに悪影響はみられません。しかし、地域により貯蔵条件によっては腐敗したとの例が2〜3ありますので、種いもの貯蔵は通気の良好な場所で行うなど特に注意して行う必要があります。
・ごく晩生のため塊茎の疫病罹病の機会が増えるので、特に採種栽培に際しては、収穫を茎葉枯凋後約10日以上経ってから行うのが望ましい。
高瀬昇、永田利男、梅村芳樹、田畑建司、入倉幸雄、岡啓