登録番号:ばれいしょ農林11号
地方番号:西海5号
系統名 :長系35号
用途 | 食用 (暖地二期作用) |
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長所 |
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短所 |
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昭和26年(1951)に北海道農試(島松)において、「農林1号」を母、「Gineke」を父として人工交配を行い、同農試で実生個体選抜及び第二次個体選抜試験を実施した後、昭和29年(1954)に第二次個体選抜選抜で選抜した161個体を長崎県農試愛野試験地に配付し、同年春作より同試験地で選抜を行ったものです。昭和35年(1960)に「ばれいしょ農林11号」として登録、育成地の島原半島にちなんで「シマバラ」と命名されました。
昭和39年(1964)に全国で春秋作合わせて1,570ha作付されました。その後は徐々に作付は減少し、長崎県では平成7年(1995)に奨励品種から廃止され、現在栽培はほとんどなくなったものと思われます。
(系譜図へ)
幼芽は赤紫で細く、萌芽時の葉色は紫です。そう性はやや開張型で、茎長は「デジマ」より短い中です。茎は細く茎数は比較的多いですが、分枝は少ない。茎色は緑色で基部に淡い赤紫の斑点があります。葉色は「デジマ」より淡い淡緑です。小葉はやや小さく「デジマ」並です。小葉の着生はやや疎で、葉質は軟らかい感じがします。花色は白ですが、つぼみが落ちやすく暖地で普通に栽培するとほとんど開花しません。
ふく枝の長さは「デジマ」と同程度で長く、いもの着生はやや深い。いもの形は楕円形ですが、秋作ではほとんど扁球に近くなることもあります。皮色は淡黄色で、表皮の粗滑は「ニシユタカ」より滑らかで、「デジマ」より粗いやや滑です。目の深浅は「デジマ」より深く「農林1号」より浅いやや浅で、外観は中位です。肉は黄色です。
休眠期間は「農林1号」に比べ約2週間ほど短い極短で、暖地育成品種の中でも最も短い。萌芽は極めて早く、そろいも良好です。初期生育はやや速く、早期肥大性は「デジマ」より優れる。熟性は「農林1号」よりやや早い。
一個重はやや小さく、上いも収量は春作では「デジマ」並に多収ですが、秋作では「デジマ」よりやや少収となります。澱粉価は「デジマ」より低く「ニシユタカ」並のやや低。貯蔵性は「ニシユタカ」並のやや良です。
葉巻病の病徴は、感染当代、次代とも巻き上がりが弱い。圃場での感染は「タチバナ」や「ウンゼン」より少なく、アブラムシ接種での発病が少ないという報告もあり、国内の品種の中で葉巻病に最も強いと考えられます。Yモザイク病には弱く、PVY-Oに対する病徴はれん葉とえそを現し、PVY-Tに対しては感受性ですが病徴を現しません。Yモザイク病に感染したいもは、いびつな裂開症状を示すことが多い。PVAには抵抗性です。PVX-oに対しては感受性で、PVX-bに対しては強い抵抗性を示します。
青枯病に対しては「デジマ」より強く「ニシユタカ」並の中。疫病抵抗性遺伝子は持っていませんが、圃場抵抗性は「デジマ」よりやや強い中に属します。そうか病抵抗性はやや強で、粉状そうか病抵抗性は「デジマ」並の中です。軟腐病抵抗性は強く、耐湿性、耐暑性も強い。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性は持っていません。中心空洞は「デジマ」よりやや多い少。裂開は「デジマ」より多い中です。
肉質は中で、煮くずれは「デジマ」より少ない少で、調理後黒変は無い。食味は比較的良く、特に春作では甘味が感じられます。煮くずれが少ないので、各種の調理用として利用面が広い。
・重粘土ではいも形が不良になりやすく、時々いもに裂開を生ずることがあるので、重い土での栽培はなるべく避けた方がよい。やや肥沃地において生産性を発揮しますが風害を受けやすいので強風の当たらないような地を選ぶのがよい。
・やせ地や肥料不足の場合は「ウンゼン」や「農林1号」に比べて大いも歩合が劣るので、増肥、特に堆肥等の肥料を十分に施す。
宮本健太郎、宮原萬芳、藤山俊計、永石定義、池田定男、高岸欽七、西村悟、佐田満、中村盛三
永田利男(交配〜個体二次)