登録番号 | 農林認定 | − | |
種苗法 | − | ||
北海道優良品種 | ばれいしょ輸第2号 | 1971. 6.17 (1928- ) |
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原品種名 | May Queen | ||
異名 | Early Victoria, Finna Early, Finney's Victory, Glenearn, Koksiaan, Maikoenigin, Thea Kartoffel |
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組合せ | 不明 |
花 (北見農試) | 草姿 (北見農試) | 塊茎 (北見農試) |
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用途 | 食用 |
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長所 |
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短所 |
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イギリスのチェルテンハムに近いベンサム(Bentham)で、E. Sadlerという人が栽培していたものを、1900年にサットン父子商会が世間に紹介したもので、両親は不明である。品種名は、中世の春の村祭り(メーデー)の際、村の娘の中から選ばれる女王にちなんだものである。
わが国への導入については、大正初期に米国から輸入され、大正6〜7年(1917〜1918)頃に府県より北海道に移入されたと書かれた資料が多いが、詳細は不明である。釧路農事試作場の事業成績には大正3年(1914)からの品種比較試験成績が掲載されている。品種試験の結果、「男爵薯」と同じ昭和3年(1928)に北海道の渡島、釧路、根室地方の限定奨励品種に決定し、昭和6年(1931)には一般奨励品種となった。
収量性も特に優れておらず、病害虫にも弱いなど、栽培しやすい品種とはいえないため、今日のイギリスでは省みられない品種である。わが国でも戦前はそれほど注目されず、戦時中は食糧統制により食用いもは「男爵薯」に統一されていたため、細々と栽培せざるを得なかった。戦後、食糧事情が安定したころから徐々に需要が伸び、昭和30年代は主に関西方面で人気が高かったが、しだいに全国的に需要が出た。昭和59年(1984)頃に需要はピークに達し北海道では9,926ha作付された。西南暖地でも、昭和40年代中頃(1970年頃)から畑にポリフィルムを被覆して地温上昇を図るマルチ栽培が普及するにしたがって、春作の作付が増加した。北海道における平成26年(2014)産の作付面積は、昭和50年(1975)に5,000haを超えて以来、40年ぶりに5,000haを割り4,954haとなった。全国では、平成24年(2012)産は春・秋作合わせて7,598ha作付けされた。
なお、「メイクイン」、「メイクイーン」、「メークィン」、「メークィーン」、「メークイーン」…などさまざまに表記されているが、正しくは「メークイン」(古くは「メークヰン」)である。
メークインの導入に関する記述
北農試 (1930) 馬鈴薯「男爵薯」及「メークヰン」の特性と其の栽培上の注意 p.4: 「此の薯は英国の原産で今より十数年前、本道に移入され…」
田口・内田 (1943).「馬鈴薯」p.19:「大正六、七年頃北海道に移入せられ…」
北農試・道立農試 (1951) 『北海道農業技術研究50年』p.72:「大正6〜7年頃移入」
道立農試 (1952) 主要農作物優良品種の解説 p.157:「大正初期米国より輸入され…」
農林省農業改良局 (1955) 『農作物品種解説』p.259:「英国産(19世紀末)。大正6〜7年頃北海道に移入し,…」
永田 (1956).『馬鈴薯の話』p.46:「本道には大正六、七年ころ移入されたものといわれ、…」
北農試 (1967).『北海道農業技術研究史』:p.225「大正7〜8年(1918〜1919) ごろ府県より移入された「メークイン」などは…」.p.236(年表の大正6年に)「大正6〜7年ころメークイン府県より移入。」
田口 (1977).『馬鈴薯』p.70:「北海道には大正6年頃(1916)本州から移入されたといわれ,…」(※大正6年は正しくは1917年である)
萌芽時の葉色は紫を帯びる。茎の長さは「男爵薯」より長く「農林1号」より短い。茎数は「農林1号」より少ない。茎色は緑色で、赤紫色の斑点がある。茎翼は波状を呈し、そう性はやや開張型である。小葉の大きさは中ないしやや大きく、形は中間で、やや密に着生している。花色はヘリオトロープのような紫系で、花弁には白い斑点(しぼり)が散在し、先端部は白い。花の大きさは中ないしやや大きく、花梗が長いのでややにぎやかにみえる。
いも着きはやや密だが「男爵薯」よりはまばらで形が長いため畑で表面が緑化しやすい。ふく枝の離れは良い。いもの形は長楕円体で、基部がや膨らみ少し曲がっている。皮色は白黄ないし淡黄褐で、目は極浅くまゆがよく発達し、目数はやや少ない。肉色は「男爵薯」よりやや黄色味がかり、「キタアカリ」より淡い黄白である。
初期生育及び早期肥大性は中程度。枯凋期は「男爵薯」より遅い中早生ないし中生である。上いも収量は「男爵薯」よりやや多いが、いもの粒ぞろいはやや不良で、規格歩留りは低い。澱粉価は「男爵薯」より低い。
ジャガイモシストセンチュウには感受性である。疫病抵抗性は弱く、塊茎腐敗にも弱い。そうか病には罹病性だが、「男爵薯」よりわずかに強い。粉状そうか病には中ないしやや強く、「農林1号」より強く「エニワ」より弱い。
Yモザイク病は、PVY-Oにはれん葉症状を示すれん葉型(crinkle type)である。PVY-T接種による第1次病徴は全身に明瞭なモザイクやれん葉症状を示し、第2次病徴は明瞭なモザイク症状を現す(我が国の既存品種の中では最も明瞭な症状を現す)。また、畑における病徴は、生育が旺盛な畑において、花の咲く頃にモザイクを現す。PVAには感染しない。Xモザイク病には罹りにくいとされており、PVX-oに対してはモザイク症状を現すか無病徴で保毒となるが、PVX-bに対しては強い抵抗性を示す。PVSにはモザイク系統に対しても無病徴の潜在感染となる。葉巻病の第1次病徴は、はじめ展開葉の基部が黄化するが巻き上がりは明瞭でなく、やがて中葉が巻き上がりその裏側は紫色(褐色)を帯びるが植物はあまり直立しない。
褐色心腐及び中心空洞はみられない。二次生長は中程度発生し、形がくずれやすい。
肉がやや黄色味がかり、やや粘質で舌ざわりが良いのが特徴である。糖分が収穫直後から他の食用品種より多いが、低温で貯蔵すると甘味と粘質度が特に増す。煮上がり時間はやや短いが、長時間煮ても煮くずれが少なく、シチュー、カレーライス、おでんなどの煮込み、サラダなどに向く。澱粉価が低いので、コロッケには適さない。煮物としての利用が多い関西で特に人気がある。
還元糖が多いのでポテトチップやフレンチフライなど油で揚げる料理には適さない。
えぐ味の原因となる有毒なグリコアルカロイド含量は「男爵薯」や「ワセシロ」より多く、食用品種の中で最も多い方に属する。また、曝光によりグリコアルカロイドが増加しやすく緑化もしやすい上、土中のいもの分布がまばらで形が長いため、いもが地表に露出しやすく、グリコアルカロイドが蓄積しやすい。培土や収穫後の取り扱いや保存には細心の注意が必要である。
・外気温が低冷となってから疫病の発病を増す地域では、貯蔵中の腐敗が多くなるので、緑化防止も考慮して、十分に培土できる畦幅を確保し、培土は遅れないようにして、疫病の防除は生育の後期まで行う。
・緑化いもは株元から遠いもの(16cm以上)に発生しやすく、畦幅66cmでは発生が多くなる。疎植にするといも着きが少し浅くなる傾向にある。
・目が浅くいもの形が長いため、取扱い中に芽が落ちたり、切片が乾き過ぎないように、浴光催芽の期間を20〜25日とやや短くしたり、切片の切り離しを植付直前に行うなどの工夫が必要である。
・株間を密にすると小粒いもが多くなりやすいので、通常40cm程度にする。小粒いもが特に多くつくところでは、目の多い頂部を切除するなど茎数を抑制すると良いことがある。
・肥沃土で増収の傾向にあるが、多肥でしかも茎葉枯凋剤を早期に散布すると食味が低下しやすいので十分登熟させてから収穫する。
・疫病の初発生が早く、疫病により生育期間が短縮すると小いもが多くなりやすいので、無農薬栽培は難しい。
・7月頃になると幼稚園や小学校の学校菜園で収穫したジャガイモによるグリコアルカロイド中毒がほぼ毎年のように発生しており、中毒を起こした品種は「メークイン」が圧倒的に多い。栽培指導に当たる教師が、栽培中や収穫後のジャガイモに光を当ててはいけないという基本的な知識を持つべきことは言うまでもないが、教育現場ではグリコアルカロイドが増えやすい「メークイン」の栽培は避けた方がよい。
奨励品種に指定している都道府県(平成24年)
北海道、青森、富山、福岡、△長崎
(△印は準奨励品種)
北海道農事試験場 (1930).馬鈴薯「男爵薯」及「メークヰン」の特性と其の栽培上の注意.北海道農事試験場時報 91:1-8
北海道立農業試験場.“主要農作物優良品種の解説”.(1952)
北海道農事試験場 (1935).[北海道農事試験場]協議要録 大正15年至昭10年.pp.42-44, 48. (国立国会図書館デジタルコレクション)
北海道農事試験場編 (1919).北海道庁立釧路農事試作場事業成蹟 第2号.pp.9-10. (国立国会図書館デジタルコレクション)
Salaman,R.N. (1926). Potato varieties. Cambridge. pp.287
p.287 MAY QUEEN
HISTORY: Parantage unknown. Raised by Mr E. Sadler, Bentham, near Cheltenham.
Introduced by Messrs Sutton and Sons, 1900.
SYNONYMS: Early Victoria, Fenney's Victory, Finna Early, Glenearn
佐藤広顕・山崎雅夫・高野克己 (2005).バレイショの加工特性と品種および比重との関係.日本食品保蔵科学会誌 31(4):155-160 (Agriknowledge)
佐藤広顕 (2005).ジャガイモの加工特性に及ぼす細胞分離性に関する研究.日本食品保蔵科学会誌 31(6):325-332 (AgriKnowledge)
小原(高田)明子・小林晃・高田憲和・森元幸・梅村芳樹 (1998).バレイショの曝光によるグリコアルカロイド生成量の品種・系統間差.育種・作物学会北海道談話会報 39:65-66
新藤 哲也・牛山 博文・観 公子、ほか2名 (2004). ジャガイモ中のα-ソラニン,α-チャコニンの含有量および貯蔵中の経時変化.食品衛生学雑誌 45(5):277-282 (AgriKnowledge)
北海道農研 畑作研究部 ばれいしょ育種研究室 (2004).ばれいしょ打撲試験機の開発および打撲黒変耐性の品種間差.平成15年度 研究成果情報 北海道農業
May Queen (European Cultivated Potato Database)Chie MATSUURA-ENDO et. al. Disintegration Differences in Cooked Potatoes from Three Japanese Cultivars: Comparison of Starch Distribution within One Tuber and Tissue Structure. Food Science and Technology Research 8(3):252-256 (2002)
ばれいしょの煮くずれに関与する要因.平成11年度北海道農業試験会議(成績会議)資料 (2000.1)
ばれいしょの煮くずれに関与する要因 (Agriknowledge 農研機構研究成果情報)
特産品・メークイン (厚沢部町)
檜山農事試験場とメークイン発祥の地 厚沢部町 (函館開発建設部 道南の農業)
メークイン教室 大正メークインの由来 帯広大正メークインまつり (帯広大正農業協同組合)
五月祭 (Wikipedia)