ⅩⅢ 我が国の『さつまいも』に関する施策と今後の課題
1.生産振興対策
(1)生産振興総合対策事業
いも類の国内生産の維持・増大を図るため、生産から流通までの一貫した高度な産地体制の構築、生産者と消費者及び実需者との連携強化、新規用途開発、新技術や新品種の導入・実証等を進めるとともに、それに必要な共同利用施設・機械及び小規模土地基盤の整備を総合的かつ計画的に実施するものです。
1) 推進事業 | 担い手を中心とした生産から流通までの一貫した高度な産地体制の構築、消費者・実需者との連携体制の整備、新規用途の開発、低コストや高品質化の推進に必要な新技術・新品種の導入・実証を行う。 |
2) 条件整備事業 | いも類の生産及び産地の形成に必要な共同利用施設、集団営農用機械及び小規模土地基盤の整備を図る。 |
(2)特定畑作物等緊急対策事業(需要確保対策事業)
生産努力目標を達成するため、全国レベルでの指導体制や協議会を設置し、実需者ニーズの開拓を促進するとともに、実需者ニーズに対応できる生産体制の確立を推進するものです。
1) 知識啓発事業 | 甘しょ及び馬鈴しょに関し、それらが有している機能性等についての知識啓発を行なうための資料の作成及び配付等を行なう。 |
2) 販路確保事業 | 特定畑作物について国産品の需要拡大を図り、販路を拡大するため、検討会を開催するとともに必要な調査、実証等を実施する。 |
2.今後の課題
(1)さつまいもの需要はマクロには増加基調で推移していますし、近年は安全・自然食品としてのイメージや食物繊維・ビタミン等の健康イメージが若者層にも定着して、1人当たりの消費量が増えています。
(2)しかしながら、分野別にみると、でん粉原料用については需要が潜在的に減少しているほか、加工食品用の分野でも蒸し切り干しが大量に中国から輸入されているのに加え、平成5年の大冷害の際に国産の供給が不足したことなどを契機に、大学いもなどの冷凍調製品の輸入が増加しています。一方、生産面では農家の高齢化が急速に進行し、作付面積、生産量ともに減少しています。
(3)このような状況の中で、消費者や実需者のニーズに的確に応えながら国内生産を維持・拡大していくためには、農作業の機械化による省力化が不可欠です。機械化一貫作業体系の確立している「じゃがいも」に比べると、さつまいもは苗の移植と収穫の2つの作業が機械化できていないために、作業時間が大幅に多くなっているのです。
(4)収穫については、最近、加工食品用までは問題なく使用できる大型の汎用いも類収穫機が開発され、9年度から発売されています。また、従来から販売されている、小型・乗用タイプの収穫機も普及が進んでいます。また、苗の移植については、実用的な性能の移植機が近年開発され、平成15年度から発売されています。
また、でん粉原料用や一部の加工食品用では直播栽培による省力化に取組むなどの努力も必要です。
(5)また、一方では新たな需要を掘り起こしていくことも極めて重要です。このためには
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等を展開することが緊急の課題となっています。
(6)特に加工食品用についてみれば、じゃがいもが国内生産の15~16%を占めるのに対して、さつまいもでは8%程度でしかありません。甘みがあるが故に利用が難しい面はあるのですが、今後は新たな用途の開発が不可欠です。この意味で、最近、取り組まれている色素利用やジュース原料としての利用、さらにはパウダーとしての利用などを強力に展開していくことが必要です。このような形態での、新たな「さつまいも食文化」を築くことが求められているわけです。
(7)また、この他に新品種の優良種苗を円滑に供給することも必要ですし、流通コストの低減も大きな課題です。さつまいもは重量作物で、運賃の他に周年供給を確保するための貯蔵コストがかさみますので、流通コストの低減が大きな課題です。このように、国内生産を維持するためには生産、流通、消費のそれぞれの段階での構造改革を強力に展開することが求められているのです。