Ⅸ 飼料用としての利用
さつまいもは、飼料用としても極めてすぐれた作物であり、つる・いもともに自給飼料として昔から多く使われてきました。しかし畜産農家が購入飼料への依存度を高めたことから、飼料用としての仕向量は大きく減少しています。これは、収穫、調製、貯蔵の諸作業に労力が多くかかり、家畜管理労力と競合することに加え、いもが良質の濃厚飼料であるものの、輸入飼料よりも割高であるためです。
しかし、さつまいもは生育途中で2~3回の刈取りをすると、10a当たり15~20tを生産できます。我が国の畜産が濃厚飼料の大部分を外国産の穀類に依存していることがカロリー自給率を低くしていることを考慮すれば、我が国の気候風土に適し、栽培しやすく、単位面積当たりカロリーが最大であるさつまいもの飼料化を真剣に考える必要があります。
その際には、以下に示すような適性品種を用いて、徹底的な機械化省力栽培を行い、飼料用いもの生産費を引き下げることが必要です。
○ 飼料用の品種の条件
- つる、いもともに良質多収であること
- カロチン含量が高く、家畜の栄養源としてすぐれていること
- 青刈用ではつるの収量が極めて多く再生力が強いこと(ツルセンガン:昭和56年)
- でん粉含量は低くてもいもの収量がきわめて多いこと
- 約3か月で、つる・いも合わせて10a当たり3tの生産量があること
- 直播により機械化できること
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○ 鹿児島の黒豚とさつまいも
- 鹿児島を代表する、おいしい食べ物のひとつが黒豚で、上品な甘さと適度な歯ごたえは、最高級の豚肉として全国に知られています。実はこの黒豚は、さつまいもを食べて味にみがきをかけているのです。黒豚は、ランドレース種などのいわゆる白豚より体がひとまわり小さく、肉質が良く、筋繊維は細かくて弾力があり、適当な歯ごたえがあります。
- 実際に「さつまいもを食べた黒豚はおいしい」ことは、広く知られているのですが、この理由を科学的に説明するのは意外と難しいようです。鹿児島畜産試験場のデータによれば、さつまいもを与えた黒豚の肉は一般的に淡く、赤肉や脂肪に旨味があることが知られています。豚肉の脂肪の融点は、さつまいもを食べることによって高くなりますが、これは低い温度では脂肪が溶け出さず、歯ごたえの良い脂身になるためと考えられています。
- 今後は、サイレージとしての利用や、さつまいも畑に黒豚を放し、畑からじかにさつまいもを食べさせるなどの可能性も追求する必要があると思われます。
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○ さつまいも茎葉で夏季の豚肉の品質向上
- 九州沖縄農業研究センターにおいて、ポリフェノールなどの機能性成分を含むさつまいも茎葉を肥育豚に給与することにより、夏季の肉質低下が緩和されることが明らかにされています。
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