Ⅶ さつまいもの流通システムと価格
さつまいもは、青果用から、加工食品用、でん粉原料用、焼酎原料用と用途が幅広いことから、流通システムもそれぞれに独特な形態となっています。特に青果用については、ほとんどが市場を経由して消費者に提供されますが、生産者価格と消費者価格の差は大きく、今後、需要の維持・拡大を進める上で、改善すべき課題といえるでしょう。
1.青果用
(1)青果用の流通は大半が市場流通であり、生協などでは生産者と小売店を直結する「産地直送」も見られますが、基本は
というプロセスをたどっています。しかしながら、青果用さつまいもの場合には、じゃがいもと異なって、系統農協以外に農家レベルの任意出荷組合やキュアリング施設所有の産地集荷商人・商社系のシェアが高いのが特徴で、地域によってその形態は大きく異なります。
(2)選果は鹿児島県の例では、品質形状をA~Cの3等級に、大きさを4Lから2Sまでの7階級に分けています。青果市場では基本的には、セリによって値がつけられますが、市場によっては相対取引の形式を取っているため、セリが行われないケースもあります。そして最終的に仲卸業者を通じて一般のスーパーや青果店などの量販店、小売店に卸され、消費者の食卓に届きます。
(3)産地別の出荷先を概観すると、主に千葉県産は関東、茨城県産は関東以北、徳島県産は大阪、鹿児島県産は名古屋、福岡の市場へと出荷されています。
○ 青果用さつまいもの段階別価格
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注:1)生産者価格は「農村物価賃金調査」、卸売価格は「中央卸売市場月報」、「小売物価調査報告」による。
2)ぞれの統計におけるデータのサンプリング方法が異なるため、同じサンプルの価格を示したものではない。
2.加工食品用及び焼酎原料用
用途、分野によって様々ですが、蒸切干しやフレーク、冷凍ダイスなどの1次加工品及び焼酎原料用の場合には、加工メーカーとの間で契約栽培を行っているケースが多いのですが、青果用と同様に農家の任意出荷組合、大規模農家による兼業的集出荷業者、専業集出荷業者が介在しています。
たとえば、鹿児島県下トップの加工食品企業では、県下の加工食品用の約5割程度を4つのJAと8集荷業者との契約によって集荷しています。このほか、中小零細企業の多い菓子メーカーでは、市場から調達する例も多いようです。
3.でん粉原料用
でん粉原料用については、でん粉需給が厳しくなったため、昭和59年から計画生産を実施しています。農協系統のでん粉製造工場の場合には、生産者農家から直接もしくは農協を通じて、また、でん粉工業組合系では集荷仲介業者を通じて集荷し、でん粉に加工されています。
平成19年4月から、砂糖及びでん粉について、「農業の担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律」に基づく新たな農業経営安定対策への転換に対応し、需要に即した生産をより一層促進するため、従来の原料作物についての最低生産者価格を廃止し、生産条件の格差から生ずる不利を補正するための交付金を交付するとともに、でん粉については、従来の抱き合わせ措置に代えて、砂糖と同様の価格調整を行う仕組みが実施されています。
具体的には、でん粉原料用の生産者の収入は、取引価格(でん粉製造業者から支払われる品代)による収入と経営安定対策(交付金、国(農畜産業振興機構)からの直接支払い)による収入の2種類から構成されます。経営安定対策の支援水準(交付金の単価)は、生産コストのうち、生産物の販売額では賄えない部分に着目して生産コストは標準的なコスト水準、生産の販売額は客観的な指標を使用し、透明性のある算定方法として「標準的な生産コスト-販売額」により算定しています。平成19年産の支援水準は25,960円/t、当面3カ年の固定となっています。