まえがき
さつまいもは大変親しみやすい作物です。干ばつに強くて収量が多く、我が国に多い火山灰性の土壌にも適しているので、江戸時代には救荒作物として全国的に広がりました。じゃがいもと並んで単位面積当たりの太陽エネルギー固定率はあらゆる作物のなかでもトップクラス。そして、生産物の『おいも』はビタミンやミネラルに富む機能性食品です。
かつて戦中・戦後の食料難の時代には、量を確保するために精いっぱい太らせてまずくなったものを食べたために「さつまいも嫌い」になった方が多いと聞いています。しかし、時代は変わりました。最近では消費者の根強い健康・自然志向を背景に、需要は堅調に伸びています。そして、育種の成果とバイテクの成果であるウイルスフリー苗の普及によって大変美しい『おいも』が市場に出まわるようになりました。
さつまいもは一般の家庭菜園でも簡単に栽培できます。大型のプランターや肥料袋で育てることもできます。そして、収穫した『おいも』を簡単に自分で調理して味わうことができるのです。このような素晴らしい『さつまいも』ですけれど、作付面積でみると全盛期の40万haから現在は4万haと大きく減少してしまいました。
現在、『さつまいも』の仕向け先は青果用として市場出荷されるものが4割、でん粉原料用が2割、このほかには、加工食品用、がそれぞれ1割という状況になっています。同じ「いも類」のじゃがいもと比べると加工食品としての利用が半分程度でしかありません。甘みの強さがアダとなっているといわれていますが、最近では精力的な品種開発の努力とあいまって色素利用、ジュースなどの新たな展望が拓けてきました。
この『さつまいもMiNi白書』では、このようなさつまいもの世界を、できるだけ多くの人に知っていただけるよう、需給動向、品種、流通形態と価格、栽培技術、食文化と調理法、苗の生産・流通など、できるだけ幅広く多くの角度から紹介するよう試みました。しかしながら、限られた時間と能力の制約もあり、十分なものとはなっていません。ですから、当面は、暫定版としてネットワーク等に公開し、各方面から幅広く意見をいただいて図表や写真なども入れながら随時追加・修正し、印刷物として取りまとめることにしました。
今後は、例えば地域色のある郷土料理メニューや地域特産品、地域在来品種などの産地情報、全国各地の「いも祭り」などのイベント情報、民間企業の技術開発や製品開発状況などを盛り込みたいと思います。また、ひとくちメモにはできれば実名を入れて専門分野からのアピールを試みたいとも考えています。
上記のような趣旨で作成した『さつまいもMiNi白書』ですので、どうか忌憚のないご意見をお聞かせいただけるよう、よろしくお願いいたします。最後に、この企画に対してご指導ならびに原稿の修正・加筆に協力いただいた多くの専門家の方々に厚くお礼申しあげる次第です。