当館ではアメリカの食品会社製のサツマイモの缶詰を数種類展示している。サツマイモの缶詰なんて日本人にはちょっと考えられないことなので、たいていの人がびっくりするが、長年アメリカで暮らしたことのある人にとっては、懐しい思い出となるらしい。それを見ていた60代の婦人がこう話してくれた。
「懐かしいわ、この缶詰。でもあんた、この使い方、分かる? 分からない。そうでしょうね。じゃあ教えてあげる。
わたしは主人の仕事の関係でテキサスに10年もいたから知っているの。この缶の中味は大学いものように乱切りにしたサツマイモの水煮かシロップ煮。それを鍋に入れ、砂糖とバターをたっぷり入れて、とろ火で煮るの。トロトロになったら、ちいさいマシュマロをその上にまいて終り。マシュマロはすぐ溶けて消えちゃう。
これがクリスマスの料理の一つね。向こうのサツマイモはなまも缶詰も身がオレンジ色のものばっかり。テキサスにも生イモもあったけど、びっくりするほど高いの。それでいて身はべチョべチョでうまくない。
だからサツマイモといえば、クリスマスの時、缶詰を買うていどだったの。向こうではサツマイモ料理はクリスマス料理の付きものの一つだったからね」