日本で食料の王様といえば、昔から米だった。米を年中食える人は、それができない人を「ヒエ喰い」、「麦めし喰い」、「いも喰い」などとさげすみ、馬鹿にしてきた。
川越は江戸時代からサツマイモで有名だったので、ここの人も「いも男」とか「いも女」などとからかわれ、いやな思いをさせられてきた。それでサツマイモに対していいイメージを持っている人が少なかったが、さいきんになってやっと少しずつ変わりだしたようだ。
川越の小中学校で「総合学習」でサツマイモと取り組んでいる所は多い。その先生方の話を伺っているうちに、世代によっていもイメージが違ってきていることに気が付いた。
四十代、五十代はいいイメージを持っている人が少ない。ところが20代、30代は逆でいいイメージを持っている人の方が多くなつているということだ。
それはそうであろう。わが国の歴史始まって以来初めてと言われた米余り現象は、もうご30年も続いている。それで米の地位は下った。逆に貧著の食べ物とされてきたサツマイモは健康食、美容食として見直され、その評価も上ってきているのだから。
今日はその若い世代の代表のような人が来てくれた。ある小学校の30代の女の先生で、前向きのこんな話をしてくれた。
「40代、50代の先輩たちによると、よそに行って出身地を聞かれても、できるだけ答えないようにしていたようね。でもわたしたちは違う。北海道でも九州でも、川越から来たと言えば笑われるわ。『いもねえちゃんだ』と。それでも気にならないのがわたしたち。逆に嬉しくなっちゃう。だって全国の人が知ってくれているわけだから。そういう町はそうはないわ。
それだから、川越ってすごい所なんだぞ、全国区の町なんだぞとなる。そこで子供たちとサツマイモ学習ができるなんて、もう最高。自分はなんて幸せなんだろうと思っちゃう」