今当館1階の売店で1番売れているのは干し芋だ。正月前までは長崎県五島産のカンコロ餅がよく出ていたが、年明け後は干し芋の天下だ。黙っていてもこれだけは売れるし、うっかり切らそうものなら「なんで干し芋がないの!」と客に怒られてしまう。
ところが困ったことに、ちょくちょく品切れになってしまう。わたしはだれがどこでどう作っているのかがはっきりしないものは仕入れない。ただそういう人たちは小量生産がふつうなのでストックが少ない。そのため今年の冬のように雨続きだと、たちまち品切れになってしまう。イモはあっても干せないからだ。

今までのわたしは冷たいからっ風が大嫌いだった。それが干し芋を売るようになって、がらっと変ってしまった。晴天が続き、からっ風がビュービュー吹きまくるようになると嬉しくなってくる。「しめ、しめ、いい干し芋が来るぞ」と。
当館が仕入れている干し芋は群馬県川場村五反田組合製の「春駒印」丸干し、静岡県磐田市の石橋商店製丸干しと平干し、そして茨城県勝田市の永井農芸センター製平干しだ。 芋を薄く切って干す「平干し」と違い、そのまま干す「丸干し」はなかなか乾かないので作り手が少ない。ただ味は丸干しの方がいいので、できるだけ丸干しを多くするようにしている。
それが受け、くちコミで確実に客がふえている。それにしてもなんで干し芋の人気がこんなに高いのだろう、そう思って来館者に聞いてみると答えはさまざまだった。
「なぜかしら? 冬になると食べたくなるのよね。夏に干し芋を食べたいとは思わないわ」
「冬は寒いし夜が長いから、家の中でテレビを見る時間が長くなるのね。その時、ロになにか入れたくなるんだけど、太るスナック菓子はこわい。干し芋なら大丈夫、いくら好きでもそうは食べられないわ」
「安いから。石焼き芋は高いわよ」
「甘味が自然だから飽きがこない。自然食の代表のような食べ物だもん」
「田舎を思い出しちゃう。懐かしい味よね」