川越市内に住んでいるという山田まり子さんが、こんな相談に来た。
「わたしは埼玉医大の医療セン夕ーに勤めていましたが、今は赤ん坊がいるので休職中です。NHKの放送大学に前々から入っていて、今やっと卒論テーマを提出できる所まで来ました。そのテーマなんですが、いろいろ考え、幼児の間食問題にしようと思うんです。
一つはわたし自身が1歳と4歳の子の子育て中だからです。もう一つは、今の母親は子供に買ってきた袋菓子をそのまま与えたり、缶ジュースをがぶ飲みさせて平気でいるでしょう。そんなことをしていて本当に大丈夫なのだろうかと心配になってきたからです。
と言ってもおやつもいろいろあって取り上げ方がむずかしいんです。あれこれ考えているうちに、『そうだ、ここは川越だ、サツマイモを柱に考えてみよう』となったんです。
でも今までそんなことをやった人はないんでしょう? それで不安になってここへ来ちゃったんです。見込みはあるでしょうか」
そこでわたしはこんな話をした。
「サツマイモが体にいいことを書いた本はいくらでもあります。それを活かした料理や菓子の作り方集もいろいろ出ています。太平洋戦争前の川越地方の農家の離乳食はサツマイモだったようですよ。ふかしたサツマイモを母親がロの中でかんでドロドロにして、ロ移しで赤ん坊にやったそうです。
またこれは昨日聞いた話の受け売りですが、歯科医も千し芋のようなかたいおやつを子供に与えることを奨めているようですよ。ものをよくかめばあごが発達するし、脳への刺戟もよく、頭も良くなるそうです」
ここまでくると山田さんの顔が和らいできた。そして「やってみますわ、なんとなく自信が出てきました」と喜んで帰って行った。