茨城県の太平洋岸の鹿島郡は、メロン、トマト、イチゴ、そしてサツマイモの大産地。手間のかかるものと、逆のサツマイモとを上手に組み合わせた専業農家の多いところとしても知られている。
今日はそこの旭村で、茨城県かんしょ生産者連絡協議会の研修会があり、講師を頼まれた。テーマは「茨城県のかんしょ振興に向けて」で、会場は箕輪地区の「いこいの村涸沼」。

開会時間より2時間も早く着いたので、会場周辺の畑を回りながら、そこにいた人たちと立ち話しをした。その1人、畠英寿さんはたまたまわたしと同じ昭和6年生まれだった。同年のよしみから「おれんちでお茶でも飲んでいけ」となり、自宅に連れていってくれた。そこで自慢のメロンとトマトをごちそうになりながら、いろんな話を聞かせてもらった。あとで家内にそのことを話すと、「まるでNHKの『鶴瓶の家族に乾杯』みたいね。知らない人の家に入れてもらったりして」と言われてしまった。
畠さんは農産物の出荷組合を作ったほどの人だから、村の農産物の歴史にくわしい。いまではメロンで日本一の旭村も、戦前は麦とサツマイモ、そして養蚕の普通の村だった。戦後は地下水を汲み上げて、畑を水田にする陸田がはやったが、やがてメロンやトマトになった。変わらないのはサツマイモで、これだけはむかしからずっと続いている。それだけにそれが大好物なのだという。しかもその度合がはんぱではない。

この辺の宴席には、よく野菜天ぷらの盛り合わせがでる。畠さんはその中にサツマイモの天ぷらがあるかないかをまず見る。ないとご機嫌斜めとなり、酒杯を取らない。「いも天はうまいよ。あれほどうまいものはない。それがないとは何事かということさ」と笑っていた。
だから畠さんの出る酒席で、いも天のないことはないという。酒はいも天で飲む。いもの大産地ならではのことといえよう。