いもの町、川越には日本で唯一のサツマイモ資料館がありました。さつまいも懐石料理「いも膳」の神山正久氏が、私費で建設して平成元年に開館した民営の資料館です。この資料館で平成4年からの16年間、館長を務めたのがサツマイモ歴史文化研究の第一人者であった井上浩氏でした。

資料館には全国のサツマイモ産地などからの訪問者が絶えず、井上氏はその一部を「武蔵野ペン」(年4回の季刊誌)に「サツマイモ資料館長日記」として寄稿していました。このコーナーには、ご本人の了解を得てその内容を掲載しています。

井上氏は、令和5年7月に92歳で逝去されましたが、最後までサツマイモ文化史研究に情熱を注がれ、書籍の原稿作成に取り組まれていたそうです。未完の原稿は、ご遺族や関係者のご尽力により「川越地方のサツマイモ文化史」として完成し、別途、JRTWebに掲載しています。

平成元年4月に開館したサツマイモ資料館は、平成20年6月1日をもって20年間の歴史に幕を閉じ、閉館となりました。現在、資料は川越市立博物館に寄贈されています。

著者:井上 浩(いのうえ ひろし)

1931年(昭和6年)、埼玉県に生まれる。県立川越高校、東京教育大(現筑波大)経済学科卒。埼玉県立浦和高校、同松山高校教諭(歴史、地理)のかたわら、サツマイモの文化史の研究を続けてきた。戦争飢饉を体験、サツマイモのお陰で今がある世代の一人として、またイモの町に住んでいる者の一人として、だれかがそれをしなければならないと思ったから。 

1992年(平成4年)より、サツマイモ資料館長。「ここにいると、その人にしか手に人らない貴重な情報がたくさん入ってくる。そこでその一部を『サツマイモ資料館長日記』とし、地元の川越ペンクラブ会誌『武蔵野ペン』(年4回刊)に連載させてもらっている。夢は日本のサツマイモの文化史をまとめること。」と生前語っていた。

編著書
  • 「川越いもの歴史」(蔵造り資料館、昭和57年)
  • 「サツマイモの話」(たなか屋出版部、昭和59年)
  • 「現代中国のサツマイモ事情」(川越いも友の会、平成3年)
  • 「川越見て歩き」(幹書房、平成5年)
  • 「サツマイモの女王 紅赤の100年』(同記念誌編集委員会、平成9年)
  • 「イラスト吉田弥右衛門物語」(川越いも友の会、平成13年)
  • 「懐かしのサツマイモ太白ものがたり」 (川越いも友の会、平成13年)
  • 「焼いも小百科」(川越いも友の会・焼き芋文化チーム、平成17年)
  • 「サツマイモ事典」(いも類振興会 企画編集委員、平成22年)
  • 「イラスト紅赤いも歴史物語」(川越いも友の会、平成29年)
  • 「紅赤120年の魅力」(川越いも友の会、平成30年)
  • 「川越地方のサツマイモ文化史」(井上浩遺作編集委員会、令和6年 ※令和3年時点の未完原稿にもとづく)

サツマイモ資料館長日記