X 種いもの世界
– 増殖・検疫の仕組みと流通体系・価格-
1.種いもの重要性と増殖システム
(1)じゃがいもは栄養体で増えるために増殖率が低く、しかもウイルス病にかかると収量、品質ともに大きく低下するという難点を抱えています。
(2)このため、昭和22年には国営の馬鈴薯原原種農場(現在は独立行政法人種苗管理センター)を設置して、原原種の生産・供給を開始し、道県による原・採種生産と植物防疫法に基づく種馬鈴薯検疫との組み合わせという現在の種苗増殖・供給システムを確立しました。この結果、種いもの更新率は大きく向上するとともに単収水準は過去半世紀で大きく向上し、北海道では3倍のレベルに達しています。
(3)なお、原原種の増殖に先立つ新品種の育成は、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構北海道農業研究センターほか2箇所の指定試験地で行われており、これを道・県が奨励品種として採択するというシステムになっています。
2.種いも検疫
(1)優良な種いもの条件としては次のようなものがあります。
【病理的条件】無病であること、つまり、種いもの内外に病害虫のないこと。
【遺伝的条件】その品種固有の特性を備えていて均一であること。
【生理的条件】植える時に休眠があけていて充実しており、内部異常もなく、
強い発芽(萌芽)力をもっていること。
【形態的条件】大きさが適度であり規格内(40~190g)の大きさで、粒そろいが良いこと。
(2)そして、病理的条件を満たすために、植物防疫法に基づいて植付前の元だね(種いもの親)、栽培中の植物体、生産物(種いもそのもの)の3段階で、植物防疫官が厳密な検査を行っています。この検査に合格しなければ種いもとしては販売できないのです。そして、検査に合格したものには「種馬鈴しょ検査合格証」が添付され、出荷されることになります。現在、種いも生産は北海道、青森県、岩手県、群馬県、長野県、岡山県、広島県、熊本県、長崎県の9道県で行われています。
○ 種馬鈴しょ検疫規程における検査合格の基準
1)使用予定種馬鈴しょ及び植付予定圃場検査 | 使用予定種いも |
|
植付予定ほ場 |
|
|
2)各期ほ場検査 |
|
|
3)生産物検査 |
|
3.種いもの流通と価格
(1)じゃがいもは、植物防疫法の指定種苗の対象となっているため、同一県内で自家栽培に利用するために増殖する場合を除いて、植物防疫官による検査を受けなければなりません。そして、現在、北海道、青森県、群馬県、長野県、岡山県、広島県、長崎県、熊本県の8道県において他の県への移出用種いもを生産しています。
平成15に生産された種馬鈴しょの量は891万袋(1袋は20㎏入で、概ね1a分の種いも量に相当)で、このうち542万袋(61%)が自県内の種子用に、148万袋(17%)が県(道)外への移出用となっています。(残りは食用やでん粉原料への転用及び減耗)
そして、北海道が全生産量の95%、移出用の82%と圧倒的なシェアを占めています。これらの種いもの大半は、自県内についてはホクレンや生産県の経済連・全農県本部を通じて、また、全国的には全農の販売網を通じて生産地の農協、ホームセンター、そして一般栽培農家、一般家庭へと流通しています。
ちなみに、平成15年春作における種いもの更新率は、北海道が93%、都府県が50%となっています。
(2)じゃがいも栽培では、種いも代は生産コストのかなり大きなウェイトを占めています。統計の整備されているでん粉原料用では、10a当りの生産費の2割強になります。そして、北海道から都府県への流通経費がかさむことから、都府県の一般栽培農家の種いも購入価格は、道内の購入価格の2倍強かそれ以上の水準となっています。
○ 種馬鈴しょの生産者価格及び購入者価格 (単位:円/10㎏)<//h4>
資料:農林水産省「農業物価統計調査」(平成6年までは年度、7年以降は年)