III 戦後50年間の需給動向と施策
第二次世界大戦後、約半世紀が過ぎたわけですが、じゃがいもの需給はこの間に劇的な変化を遂げました。大増産運動が展開され、食料の安定供給に貢献した戦後復興・食料増産期(昭和20~35年)、でん粉原料用、市場販売用がシェア を伸ばした高度成長期(昭和36~50年)、飼料用が減少し加工食品用が伸びた安定成長期(昭和51~60年)、冷凍調整品などの輸入が急増した国際化の進展期(昭和61~現在)というように4つの時期に分け、それぞれの時期の需給の動きと講じられた施策について整理すると以下のようになります。
1.需給の動き
(1)戦後復興・食料増産期(昭和20~35年)
・総需要量の3割程度を占める農家の自家食用消費は減少傾向で推移する一方で飼料用が急増し、
でん粉原料用も増加基調で推移。
・生産量は昭和20年の180万tから昭和35年には360万tと急増。
(2)高度成長期(昭和36~50年)
・農家の自家食用及び飼料用が減少する一方で、でん粉用は昭和43年には4割程度にまで増加。
・市場販売用は増加基調となり、加工食品用が40年代末に急増。
・生産量は変動はあるものの350万t程度でほぼ横ばいで推移。
(3)安定成長期(昭和51~60年)
・飼料用が減少傾向となる一方で加工食品用が急増。
・市場販売用は2割強、でん粉原料用は4割強の水準で横ばいで推移。
・生産量は高位安定で推移し、昭和61年には史上最高の407万t。
(4)国際化の進展期(昭和61年~現在)
・食生活の変化に伴って加工食品用の需要が増加し、
円高の要因もあって安価なアメリカなどからの冷凍調製品の輸入が急増。
・その反面、単収の着実な向上にもかかわらず、
作付面積の減少により生産量は漸減傾向で推移し、平成15年産は294万t。
2.講じた施策
(1)戦後復興・食料増産期(昭20~35年)
・昭和22年に国営の馬鈴しょ原原種農場を設置して優良種苗の供給体制を整備。
・昭和28年に農産物価格安定法を制定し、市場価格が一定の水準を下回る場合に
じゃがいもでん粉を政府が買い入れるという価格安定制度を導入。
(2)高度成長期(昭和36~50年)
・高でん粉品種の育成普及や栽培合理化実験集落設置事業による
栽培の機械化 、省力化を推進。
(3)安定成長期(昭和51~60年)
・優良種苗の安定確保、機械施設・集出荷貯蔵施設の整備により
生産団地の育成を推進。
・昭和59年からは、でん粉原料用の計画生産を実施。
(4)国際化の進展期(昭和61年~現在)
・需要の多様化に対応するため、均一な品質のロット確保と周年安定供給、
加工処理の高度化等のための広域的な集出荷・貯蔵施設、加工施設等の整備を推進。
・平成7年から12年までの間に、
需要確保・拡大対策、でん粉原料用から加工食品用等への用途転換対策を実施。
・今後の担い手の減少に対応した省力栽培体制を確立するため、
北海道においてソイルコンディショニング栽培技術確立対策を実施。
3.施策の効果と評価
優良種苗の供給体制の確立に伴って種子更新率は飛躍的に向上しました。 そしてこれに伴って単収は着実に向上し、北海道では昭和20年代と比べると3倍程度に向上しています。また、北海道では機械化一貫作業体系の確立により生産性が向上し、労働時間も大きく低減しました。しかし、都府県では農家の高齢化の進展とともに生産は減少しています。
目下の懸案事項は、
・需要が増加している加工食品用の分野で、国産のシェアが伸び悩んでいるということ
・ジャガイモシストセンチュウ汚染地域の拡大が止まらないことうえ、
センチュウ抵抗性を備えた新品種の導入に遅れが見られること
・輸入品に対抗するため、生食・加工食品用生産において、
高品質化と省力化を同時に達成することが可能な技術を早急に確立すること
です。