前書き
じゃがいもは不思議な作物です。生育が非常に早くて単位面積当たりの太陽エネルギー固定率はあらゆる作物のなかでもトップクラスに属します。そして、生産物である、『おいも』はビタミンやミネラルに富む機能性食品でもあるのです。そして、何よりもありがたいのは、プロの農家ばかりでなく、一般の家庭菜園でも簡単に栽培できることです。スペースさえあれば、小さなプランターや肥料袋でさえも、立派に育てることができます。
そして、収穫した『おいも』を簡単に自分で調理して味わうことができるのです。 その調理方法も、煮物、フライ、サラダ、スープと極めて多様です。このような作物は、ほかにはあまり例がありません。スターではないけれども国民的に幅広く好かれる庶民的な作物といえるのではないでしょうか。
けれども、我が国でのじゃがいもの利用の仕方は、ヨーロッパなどに比べると決して洗練されたものとは言えない状況にあります。もちろん、食生活が違いますから単純に比較することは適当ではないのですが、我が国の1人1年当たり17㎏に対して、ヨーロッパ諸国では100㎏近くを食べているのです。ですから、これからも消費量は 伸びるでしょうし、最近ではカラフルなじゃがいもやレンジで簡単に「ふかしいも」が食べられる品種など、ユニークな品種も開発されています。
この『じゃがいもMiNi白書』では、このようなじゃがいもの世界を、できるだけ多くの人に知っていただけるよう、需給動向、品種、流通形態と価格、栽培技術、食文化と調理法、種いもの生産・流通、さらにはユーザーから見た問題点など、できるだけ幅広く多くの角度から紹介するよう試みました。
今後は、例えば地域色のある郷土料理メニューや地域特産品、地域在来品種などの産地情報、全国各地の「いも祭り」などのイベント情報、民間企業の技術開発や製品開発状況などを盛り込みたいと思います。また、ひとくちメモにはできれば実名を入れて専門分野からのアピールを試みたいとも考えています。
上記のような趣旨で作成した『じゃがいもMiNi白書』ですので、どうか忌憚のないご意見をお聞かせいただけるよう、よろしくお願いいたします。 最後に、この企画に対してご指導ならびに原稿の修正・加筆に協力いただいた多くの専門家の方々に厚くお礼申しあげる次第です。