登録番号 | 農林認定 | ばれいしょ農林20号 | 1974. 7 |
種苗法 | − | ||
北海道優良品種 | ばれいしょ北海道第12号 | 1974. 4. 5 | |
地方番号 | 根育11号 | (1967) | |
系統名 | なし | ||
系統番号 | K62144-7 | ||
組合せ | 根系7号×北海39号 (1962 根釧農業試験場) | 系譜図 |
花 (北見農試) | 草姿 (北見農試) | 塊茎 (北見農試) |
画像をクリックすると大きな画像が表示されます。 |
用途 | 食用 ・ 加工食品用 (ポテトチップ) |
---|---|
長所 |
|
短所 |
|
昭和37年(1962)、北海道立根釧農試において澱粉原料用と食用とを兼ねた早生、多収品種の育成を目標に、中生、多収、大粒で目が深い「根系7号」を母、早生で早期肥大性に優れ、ごく大粒で目が浅く低澱粉価の「北海39号」を父として交配し、翌年より実生個体選抜に供試して選抜を重ねたものである。系統選抜において、粒が大きく外見も良いことから早くも注目され、生産力検定予備試験の結果でも、早生、大粒、多収で兼用種として有望と考えられたため、昭和42年(1967)から根系番号を付与することなく直ちに「根育11号」の名で生産力検定試験に供試し、昭和44年(1969)より地方適否並びに病害抵抗性の検定を行った。その結果、昭和49年(1974)に北海道における早生食用品種の優良品種として採用された。同年7月に「ばれいしょ農林20号」として登録され、熟期が早くいもが白いことから「ワセシロ」と命名された(「男爵薯」に比べ、肌が白く、多収で優れているという意味から、育成者が出した品種名の候補は「男爵」よりも2階級高い「ハクシャク(伯爵)」であったが、農林省で行われた品種名の審査の際に「いまさら爵位をくれる必要もあるまい、それに男爵と伯爵とどちらが偉いか、今の人にはピンと来ないだろう」という意見があり、「ワセシロ」に落ち着いた)。
北海道では平成2年(1990)に2,413ha栽培されたのをピークに、減少を続けている。平成24年(2012)年の北海道における作付面積は402haで、以後300ha台を推移している。北海道外では群馬県、千葉県、青森県、茨城県など関東や東北地方を中心に、北海道より多い476ha(平成24年(2012))作付けされている。
青果用としては「伯爵(白爵)」、「ネオ男爵」、「キング伯爵」などの名で、特に「男爵薯」の出荷が始まる前の“新じゃが”として多く出回っているほか、ポテトチップ原料としては主として“北海道産の新じゃが”を売りにした商品の原料に用いられています。
(系譜図)
萌芽時の葉色は濃緑で紫色を帯びる。茎長は「男爵薯」より約10cmほど長いやや短で、茎数は少なく、太さはやや太い。茎の色は緑色で、「男爵薯」や「紅丸」よりもやや濃い赤紫色の2次色が斑点状に分布する。茎翼はやや波状である。分枝は少なく、そう性は「男爵薯」よりやや開張である。葉色は生育が進むにつれて淡緑となり、「男爵薯」より淡い。小葉は幅広で、「男爵薯」より大きい。花色は青紫系で2次色は無い。花は大きく、数は「男爵薯」より少ない中で、花梗は「メークイン」より短いので花はあまり目立たない。花粉は「男爵薯」同様微程度しかないので、自然結果はほとんどみられない。
いもの着生位置は「農林1号」より浅く「男爵薯」並で、いもの分布は「男爵薯」よりまばらの中で、ふく枝の離れは良い方である。いもの形は扁球〜扁卵、皮色は淡白黄で「男爵薯」より白く、既存品種の中では最も白い方である。表皮は「男爵薯」より滑らかで、外観は良好である。目の深さはやや深く、「男爵薯」と「農林1号」の中間程度である。肉色は白い。
休眠期間は「男爵薯」より短く「農林1号」より長い。初期生育は「男爵薯」よりやや速く、いもの着生時期はほぼ「男爵薯」並だが、早期肥大性は既存品種の中では最も速く、早掘りでは常に「男爵薯」より多収を示す。枯凋期は早生に属するが、「男爵薯」より2〜3日遅れることが多い。倒伏は生育後期にやや多くなる。
いも数は「男爵薯」より少ない。上いも平均一個重は大きく、Lサイズが多く屑いもが少ない。「男爵薯」に比べ上いも収量は約1割、中以上いも収量は2割以上多収と、早生としては極めて多収である。澱粉価は「男爵薯」より約1ポイント高い。
早掘りでは密植により増収するが、施肥量や栽植密度の影響は受けにくい方である。
疫病抵抗性遺伝子R1を持つ、これを侵す疫病菌が広く発生しており、圃場抵抗性も弱いため、「男爵薯」に準じた防除が必要で、塊茎腐敗の発生は一般品種並である。貯蔵中に発生する乾腐病に弱く、特に、Fusarium solani coeruleumという分化型による乾腐病には注意が必要である(「ワセシロ」が普及につまずいた一因と言われる)。軟腐病には「男爵薯」並に弱く、夏疫病、菌核病には中ないしやや弱い。青枯病には弱い。粉状そうか病には「男爵薯」より強く「農林1号」並で、中ないしやや弱い。そうか病には一般品種並に罹病する。
Yモザイク病の発生は比較的少ないとされる。PVY-Oによる病徴はえそ型となるが、PVY-Tに対しては無病徴である。PVAには感受性で病徴は現れない。Xモザイク病に対しては軽いえそ症状をみせることが多い。PVX-bに対しては抵抗性を示す。PVSのモザイク系統に対しては病徴を示さない。
ジャガイモシストセンチュウには感受性である。ミナミネグサレセンチュウには弱い。
褐色心腐の発生は無く、中心空洞も極めて少なく、2Lの特大いもでもほとんどみられない。裂開もほとんどみられません。二次生長の発生は中位で、黄変期の前に干ばつにあうと、こぶ型の二次生長は中程度発生することがあるが、土中で新しい塊茎から萌芽する型の二次生長は極少ない。黒色心腐は「男爵薯」より発生しにくい。
早期肥大性があり、黄変期以降の早掘りにおいて「男爵薯」よりチップカラーや食感などで優れているため、端境期をねらった生食・加工用に利用できる。
剥皮褐変は「男爵薯」よりやや少ない中である。肉質はやや粉質で、長く貯蔵すると次第に粘質度を増す。水煮での煮上がり時間は「男爵薯」より短いので、煮過ぎないように注意する必要がある。煮くずれは「男爵薯」並かやや少なく、舌ざわりは滑らかである。調理後黒変はほとんど無い。アミノ酸がやや多く、食味は「男爵薯」と同等の中の上で、くせが少ない味とされる。低温下で貯蔵すると肉色がやや黄色みを帯びるようになり甘味も増す。
ポテトチップの原料としては「トヨシロ」より早くから収穫できるが、貯蔵後のチップ品質は「トヨシロ」より劣るため、主として「トヨシロ」の収穫が本格化するまでの秋口の原料として使用される。
グリコアルカロイド含量は「男爵薯」並かわずかに少なく、曝光による増加は「男爵薯」より少なく「さやか」並に少ないが、表皮は「さやか」や「男爵薯」より緑化しやすい。
食用として北海道全域に適応する。「男爵薯」に比較し、肥大が速く、早く出荷できる。大いもが多いが、中心空洞が無く、調理後の黒変が少なく、加工歩留りも高いため、生食用、ポテトチップ用などの油加工用に好適である。
・栽培管理は「男爵薯」に準じて行い、市場の好みに合わせて粒大を調節する場合には、栽植密度を加減して行う。
・茎数が少ないので、小粒全粒種いもを活用するなど目数を確保することが必要。
・浴光催芽の期間は「男爵薯」などよりやや短くてもよく、温度を上げすぎないように注意する。
・乾腐病にかかりやすいので、過去に発生のなかった排水の良い圃場を選んで作付けし、周皮が固くなってから晴天の日など畑の乾いたときに傷をつけないように収穫し、コルク化後選別、出荷するように努める。
・暑い夏の時期に収穫する場合には、早朝に収穫し、暑い畑には長時間放置しないようにする。
・仮貯蔵は高温を避け、冬期の貯蔵温度もできるだけ低温とする。
・紙筒移植にも適している。
・いもの分布は「男爵薯」よりまばらなので、培土は緑化防止のため遅れずに行う方がよい。
北海道、青森、千葉
浅間和夫、金子一郎、上野賢司、村上紀夫、伊藤平一、伊藤武
ワセシロ (農林認定品種データベース Agriknowledge)
浅間和夫、伊藤平一、村上紀夫、伊藤武.“ばれいしょ新品種「ワセシロ」の育成について”.北海道立農業試験場集報.33 (1975) (要旨)
北海道立農業試験場.“農作物優良品種の解説 (1961-1977)”.北海道立農業試験場資料 第9号(1979).北海道立中央農業試験場
品種PROFILE ワセシロ (カルビー株式会社 品種紹介)