登録番号:ばれいしょ農林19号
地方番号:西海13号
系統名 :長系74号
系統番号:S62025-48
用途 | 食用 (暖地二期作用) |
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長所 |
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短所 |
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昭和37年(1962)に北海道農業試験場において、大いもで多収の良食味母本系統「北海31号」を母、大粒で春秋とも多収性の「ウンゼン」を父として交配、採種を行ったものを、翌々年春作に長崎県総合農林センター愛野馬鈴薯センターにおいて実生養成を行い、以降選抜を重ねてきたものです。昭和45年(1970)春に西海13号の地方番号を付け、諸特性について試験を行った結果、昭和46年(1971)に「ばれいしょ農林19号」として登録され、江戸時代に外国への窓口であった長崎の出島にちなんで「デジマ」と命名されました。
それまでの暖地の主力品種「タチバナ」に比べ食味が良く、いもの外観も優れるため市場で好評を得て、暖地の主力品種になりました。その後、多収の「ニシユタカ」の栽培が増えるにしたがい作付は減少しています。平成15年(2003)には春作で1,341ha、秋作で1,221ha、計2,562ha作付けされており、北海道でも、移出用の採種栽培として21ha(平成18年)作付されています。育成地の愛野町では、赤土ばれいしょ“愛の小町”の銘柄で販売されています。
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そう性は「農林1号」より開くやや開張型ですが、「ウンゼン」ほど開張ではありません。茎長は「タチバナ」より長く「農林1号」並です。茎数は「タチバナ」と同程度かやや多めで「農林1号」より多く、分枝数もやや多い。生育は非常に旺盛で、特に春作で多肥にしすぎると過繁茂になりやすいですが、通常の繁茂程度では倒伏は少なめです。秋作では茎数がやや多く分枝も多いので、風雨によって倒伏しやすい。葉色は「ニシユタカ」より淡く中程度、小葉の大きさは中で、「農林1号」や「タチバナ」に比べると疎に着きます。また、生育後期になると土壌の乾燥とも重なって小葉が巻き、葉巻病に似た症状を示すことがあります。花色は白で、つぼみのうちに落ちるものが多く、開花数は少ないですが、「ニシユタカ」よりは多い。花の大きさは「タチバナ」より小さく、葯の色も薄く全体的に貧弱で、花粉がほとんどないため自然結果はほとんどみられません。
ふく枝は長く数も多い。特に春作ではいも着きが疎になりやすいため掘り取り時に注意が必要ですが、秋作では短くなります。いもの形は扁球〜扁卵で、春作ではやや長く、秋作では球に近くなります。目は浅く、皮は淡黄色で滑らかなため外観が極めて良い。肉色は白黄〜淡黄です。
いもの休眠期間は春作産で64日程度、秋作産で105日程度で、「農林1号」より短く、「タチバナ」と同じ程度か少し短く、暖地の二期作に適した休眠日数です。春作の初期生育は「タチバナ」より速く、「ニシユタカ」より遅い。秋作での初期生育は極めて良好です。いもの着生は「農林1号」より少し早いですが、特に早い方ではありません。特に中期以降の肥大が良好です。熟期は「農林1号」より少し遅く中晩生に属します。
いも数は「農林1号」や「タチバナ」より多く、大いもになりやすく、いものそろいはあまり良くありません。収量は春秋作とも多収です。澱粉価は12〜14%で、「農林1号」より1ポイント程度低いですが、暖地品種では高い方です。
青枯病に弱く、夏期の高温時に乾腐病の発生も多い。軟腐病に対する抵抗性は強い。そうか病にはやや弱く、粉状そうか病抵抗性は中程度です。ネグサレ線虫に対する抵抗性は強で、「ウンゼン」、「タチバナ」、「農林1号」のいずれよりも強い。疫病抵抗性主働遺伝子R1を持っていますが、圃場抵抗性は弱いので防除対策上注意が必要です。Yモザイク病に対する抵抗性は強い方であり、PVY-Oによりえそ型の病徴を示しますが、PVY-Tの病徴は不明瞭です。PVYTNによる塊茎えそ病にはやや弱いようですが、「ニシユタカ」ほど弱くありません。PVAには抵抗性です。PVX-oには感受性ですが、PVX-bには抵抗性です。PVSのモザイク系統には潜在感染となります。葉巻病の病徴は明瞭で圃場での感染率はやや低く、抵抗性は「タチバナ」より強いと考えられます。また春作では二次生長や裂開による変形が発生しやすい。
肉質はやや粉質ですが、春作では中間〜やや粘質になりやすい。煮くずれは暖地品種の中ではやや多く、調理後黒変は無い。食味は現在暖地で栽培されている品種の中では最も優れており、「ウンゼン」、「タチバナ」より格段に優れています。肉じゃがや煮物、みそ汁の実、揚げジャガに適します。秋作では澱粉価が比較的高く、ポテトチップ、ポテトサラダ、粉ふきいもにも合います。
収穫後、日光に当たると緑化しやすい。
短休眠で、多収で各種の病害に対してかなりの抵抗性を持っているので、広く西日本の二期作地帯の食用向き品種として適する。
・青枯病に弱く、高温時には植え付けた種いもに腐れが生じやすいので、秋作の植え付け時期には注意する。
・春作で多肥にすぎると地上部が過繁茂になり、また、重粘土地では二次生長や裂開を生じやすくなり、乾腐病等の貯蔵中の腐敗も多くなるので注意する。
・春作では、マルチ栽培して日長が短い時期に萌芽させると、茎長があまり長くならず、いもの肥大も良くなる。
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知識敬道、北野保樹、宮本健太郎、佐田満、室園正敏、田渕尚一